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ヨルシカ-月と猫のダンス考察 すべての物語は繋がっている

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昨年行われたヨルシカのライブ「月と猫のダンス」がYouTubeにて全編無料公開された。このライブはn-bunaが書き下ろした朗読劇の合間に曲を演奏するというコンセプトライブとなっている。

セットリストには昨年のアルバム「幻燈」からの曲や未発表の新曲、もちろんそれまでのアルバムの曲までバラエティ豊かに揃っており、まさに今のヨルシカを代表するライブとなった。

話題を読んでいるのがこの朗読劇の内容だ。ヨルシカは「だから僕は音楽を辞めた」「エルマ」からなる”エイミーとエルマの物語”、そして盗作で展開される”とある作曲家の物語”、これまで2つの物語が展開されている。

今回の朗読劇はその2つの物語とのつながりを連想させるシーンがたくさんあったのだ。その点について考察していきたい。

主人公は「盗作」に出てきた少年?

まず、注目すべきはこの朗読劇の軸となるベートヴェンピアノソナタ第14番「月光」、通称月光ソナタ。主人公はこのソナタの冒頭部分を何度もなぞるように弾く。

月光ソナタはアルバム「盗作」でも登場している。オープニングのインストにそのまま使われているし、物語上でも大きな意味を持つ。

「盗作」では主人公の奥さんがもともとピアノを弾いていて、主人公も奥さんに習って月光ソナタを弾くようになる。そして、それは盗作に出てくる少年にも受け継がれる。

いつも主人公のアトリエで月光ソナタを一緒に弾いていたのは印象的なシーンだ。

そしてこの朗読劇でも主人公は「とある人に教えてもらったのだ」と語っている。

だとすれば、この主人公は盗作に出てくる少年に違いないのではないか?

先生のもとを離れたあと彼は画家になり、こうして今も月光ソナタを弾いているのではないか。

月光ソナタをわざわざ持ってくるあたり、その可能性は高そうだ。

主人公はエイミーの生まれ変わり?

ヨルシカのライブは頻繁に「生まれ変わり」というワードが出てくる。

配信ライブのタイトルであり、現在行っているツアーのタイトルでもある「前世」。

エイミーとエルマの物語を総括したライブ「月光」もエイミーが生まれ変わる前に生前の記憶を遡る、というものだった。

「盗作」でも主人公とその奥さんはエイミーとエルマの生まれ変わりではないか、という見方もできる。

そして、この朗読劇で最も重要なシーンが、家に迷い込んだ猫と目を合わせた主人公が理由もなく涙を流すシーンだ。

この主人公、つまりは「盗作」に出てくる少年は、エイミーの生まれ変わりであり、その猫こそがエルマの生まれ変わりではないのか? でなければ涙を流す理由なんてないに等しいだろう。

つまりはあのシーンこそ生まれ変わったエイミーとエルマの感動の再会であったわけである。

あるいは「盗作」の主人公とその奥さんなのかもしれない。

とにかく、エイミーとエルマの物語、盗作の物語、月と猫のダンスはすべて「生まれ変わり」というテーマで繋がっているのである。

また、月と猫のダンスの主人公が絵を描く時、頭に景色が浮かぶ、と言っていた。そして、それは間違いなく一人旅立ったエイミーが見てきた景色なのだ。とすれば、やはりこの主人公はエイミーの生まれ変わりで、「盗作」における少年なのだと邪推する。

ヨルシカの物語はすべて繋がっており、今も紡がれ続けている

月と猫のダンスは明らかに、エイミーとエルマの物語と「盗作」の物語とのつながりが見受けられる。

では最近のヨルシカ作品ではどうか。

最近はヨルシカもタイアップが多くなり、前作は文豪作品からインスピレーションを受けた作品群という統一したテーマがあったが、最近はそういったコンセプチュアルな作品は見受けられなくなっている。

しかし、先日公開された「忘れてください」のYouTubeの概要欄には、手紙が記されており、この内容はおそらく「盗作」の少年が先生にあてた手紙だと思われる。

拝啓

家の近所に、びわの実が生りました。先生はいかがお過ごしでしょうか。 びわは、火曜日の昼に図書館から帰る途中で見かけました。鮮やかな橙色の、丸い実です。生垣越しで近くには寄れませんでしたが、緑の葉の中に橙色が見え隠れして、目を惹きます。その時僕は丁度、北原白秋の「桐の花」を読んでいて、目を落とすと、示し合わせたようにページ上のびわの文字が目に入りました。それはこういう短歌でした。

枇杷の木に黄なる枇杷の実かがやくとわれ驚きて飛びくつがへる

「飛びくつがへる」は飛んでひっくり返ることだそうです。僕はそんな風に飛び上がったりはしませんでしたが、目の前にあるびわの実と、ページの角ばった文字を見比べながら、何だか嬉しいような、偶然文字と世界と、僕の手のひらが浅く繋がったような、そういう感覚を覚えました。平たく言ったら、運命だと思ったのです。それで、今日はびわをモチーフに詩を書いてみようと思いました。

僕は想像します。 丘の下に小さな家があります。そこに大人になった僕と、誰かが住んでいます。五月の昼下がりに、僕たちはキッチンに立っていて、近くの窓からは橙色の実が成ったびわの木が覗きます。窓を開けているから、きっと良い香りがすることでしょう。僕はびわの香りは知りませんが、きっと甘い蜜のような香りです。僕たちは幸せな時間に包まれています。ですが、僕は幸せには終わりがあることを知っています。たとえ心の別れがなくとも、肉体的な別れがいずれ来ます。永遠には続かない幸せです。 その人が僕との別れを経験したあと、一人で暮らす姿を想像します。その時僕は、僕を忘れてほしいのです。

お体にお気をつけて。

敬具

また「月光浴」という曲はタイトルから「盗作」の世界観を彷彿とさせる。

このようにコンセプチュアルな世界観から離れてもなお、ヨルシカの物語は紡ぎ続けられているのである。

全編無料公開されているので是非見てほしい!

とにかく全ヨルシカファンに見てほしいライブだ。

注目したいのは、ボーカルのsuisさんが朗読劇後半でアクターとして演技をしている点だ。

しかも物語上でかなり大きな意味を持つ役で、それをそつなくこなしてる。

ファンにとっては嬉しいファンサービスだ。

いつまで公開されているのかわからないのでぜひ、消える前に見てほしい。

また、Blu-ray、DVDも出ているので、一生持っておきたい!という方はそちらを購入するといいだろう。特典もあるみたいだ。

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今回、Blu-rayのほうが先に出ているのだが、そこの注意書きに「これは無料公開されます」ときちんと書かれている。

無料公開してもファングッズとしてのBlu-rayは機能するか? というn-bunaさん流の実験なのだろう。

そういえば最新アルバム「幻燈」も画集は出たけれどCDは出なかった。その前のミニアルバム「創作」に至ってはCDが付属していないパッケージという冗談みたいな商品も出た。

n-bunaさんなりに、この消費される音楽、というものに対しての答えを探している最中なのだろう。

これからもヨルシカの動向に目が離せない。