6位は羊文学!
このアルバムは個人的にもお気に入りで、聴いていると心が洗われるような感じがします。
呪術廻戦EDの「mora than words」から人気に火がつき、推しの子2期EDにも抜擢された「Burning」で海外からも注目を集め、現在は多くの海外公演もこなす羊文学。
その忙しない日常から生み出されたのは、もっと個人的でパーソナルな人間の部分、飛躍する人気とは裏腹においてけぼりにされた自分のうちの葛藤と向き合った非常に人間的なアルバムだと感じています。
3ピースならではのシンプルなアレンジで言葉を紡ぐ。その歌は僕達に日々忘れていた小さな喜びや気付き、そんなものを思い起こさせてくれます。
ここまで順調にキャリアを積み重ねているように思える彼女たちですが、今、現在、ひとつ大きな問題を抱えています。
それはドラマー・フクダヒロアの休養です。
唯一の男性メンバーであるフクダヒロアは2024年の5月からコンディション調整のために休養期間に入っています。そこからドラムはサポートを加えて、バンドは演奏活動を継続しています。
あくまで休養期間ではあるのですが、一年以上、メンバーが離脱状態にあり、そんな現状とは裏腹にバンドの人気はうなぎ登りに上昇している……、というのはバンドにとっても大きな混乱を伴うものだったのではないでしょうか?
だからこそ、このアルバムはより自分の中の人間的な部分、羊文学としての自分ではなく、一人の人間としての葛藤、苦悩を描き出す必要があったのではないでしょうか?
推しの子2期EDに抜擢された「Burning」は、推しの子の主人公であるアクアの葛藤を表現するかのようにファズののった轟音のギターから始まります。
役者を志すアクアは自分には才能がないと思っており、そのため他人と比較して自己嫌悪に陥ります。しかし、アクアには芸能界に入ったある目的があり、そのためならどんな手段もいといません。彼には大きなトラウマがあるのですが、それをむしろ武器にしてやがて役者として開花していきます。それは彼にとって茨の道にほかならないし、大きな苦痛を伴うものでした。その葛藤をこの曲は見事に表現していると思います。
この曲の重厚で混沌としたサウンドはそのままギター・ボーカルである塩塚モエカの葛藤も表しているのではないでしょうか?
もしかしたらフクダヒロアは脱退してしまうかもしれない、そんな状況下でもバンドの人気は上がり続け、海外公演をこなし、制作に追われていく……。
そんな置き去りにされた自分を取り戻すためにこのアルバムは作られたのかもしれません。
だからこそ、このアルバムは多くの人の心に寄り添い、癒やしを与えてくれるのだと思います。
まずは、フクダヒロアの復帰をファンとしては待ち望んでいます。
彼はキック・スネア・ハイハットの3点だけでドラムを成立させるという、かなり特徴的なスタイルを持っています。彼のドラムセットはおそろしくシンプルで、普通はたくさんあるタムは一つしかないし、シンバルも一つしかありません。そのスタイルが羊文学の音楽性に与えた影響というのは計り知れないと思います。彼抜きに羊文学は成立しません。
あくまで休養期間であり、活動休止ではないので復帰するはずだと信じています。
また3人のオリジナルメンバーで演奏を聞ける日を心待ちにしています。
そして、このアルバムを作ることによって、フロントマン・塩塚モエカの葛藤が少しでも癒やされていたらいいなと心から思っています。

