昨夜見たMステのパフォーマンス(2025年9月5日放送回)に衝撃を受けながら筆を走らせている。
Mステのスタジオにいるかと思ったら実は渋谷にいて、そこから生放送で歌う……。しかも、その後スタジオに移動してもう一曲。演出もパフォーマンスもすべてが規格外だった。
さて、同日にリリースされたニューアルバム「Prema」がもう大事件である。このアルバムは日本の音楽シーン、いや、世界の音楽シーンを塗り替える可能性がある。
世界中のアーティストが夢見るグラミー賞。その聖域とも呼べる主要四部門。ここに日本人の名前が載ったとは過去一度もない。それどころかアジア人という枠組みでも一人もいない。
しかし、BTSがそれを変えてくれた。BTSはグラミー賞授賞式でアジア人初としてパフォーマンスを行った。残念ながら受賞こそ逃したものの、これが大きな一歩となった。
しかし、その人気絶頂のさなか、兵役による活動休止。その後、K-POPシーンは大いに盛り上がることになるのだが、BTSを超えるグループは現れず……。
そんな中、最近、世界でJ-POPへの関心が高まっている。YOASOBIの「アイドル」を始め、日本語のアニソン曲が平気でビルボードチャートに入ってくるようになった。この音楽のグローバル化の波に日本の音楽シーンは大きく沸き立っている。
今年5月、MUSIC AWARD JAPAN(通称MAJ)が発足。日本版グラミー賞として、厳正な審査員による投票による音楽賞が生まれた。これは明らかに日本の音楽を世界へと発信しようとする試みの一つであろう。
しかし。
アメリカ市場を目指すためにはやはり言語の壁が大きく立ちはだかる。
このことはすでにONE OK ROCKなど実際にグローバル市場で戦ってきた日本人たちが証明している。
やはり日本語ではマスには伝わらない。どのアーティストも英語にシフトしていく流れがあった。
日本語のヒット曲では米津玄師の「KICK BACK」が挙げられるが、あれはやはり海外ではアニソンとして認知されているのだ。つまり、「チェーンソーマン」というコンテンツありきなのである。米津玄師は北米・ヨーロッパツアーも成功させているが、その影にはやはり宮崎駿監督作「君たちはどう生きるか」があった。アニソンを聞かない一般層に認知されるためにはやはり英語詞である必要がある。
そこで勝負に出たのがこの藤井風の「Prema」である。なんと全編英語詞である。
しかも、そこに通底しているのは愛と平和、そして信仰というキリスト教の考え方である。
藤井風の作品にはなぜか、よく「God」という言葉が出てくる。藤井風自身、敬虔なカトリックなのかもしれない。
これがアメリカの思想とマッチしている。
藤井風の音楽はゴスペルやR&B、ソウルなどの黒人音楽がバックボーンとしてある。
そして、これらの音楽はアメリカ市場のメインターゲットであるのだ。
藤井風は狙ってそういうジャンルを目指したのではないのだろうが、この全編英語詞というチャンレンジは明らかにグローバルの市場を狙ったものであろう。
藤井風はこれから世界の市場に打って出る。
そして、その先にはグラミー賞主要四部門を見据えている。
藤井風自身は否定するかもしれないが、僕はこのアルバムはそれほどの価値があるものだと思っている。
セールスが今後どのように推移するかはわからない。
正直、日本市場では売れないと思う。
そこは明確に藤井風自身が切った部分だ。
しかし、全編英語詞にしたことによってグローバルで売れる可能性がぐっと高まった。
今後、多くのアメリカ人がこのアルバムを聞くだろう。そのときにどんなリアクションをするのか、僕は楽しみで仕方ない。
日本にもこんな天才がいるんだぞ!こんな素晴らしい音楽があるんだぞ!ということを世界に知らしめていただきたい。