4位はONE OK ROCK!
2022年の「Luxury Disease」に引き続き、スタジアムを震わせるような轟音のギターと力強いボーカル。
もはや日本に留まらず、世界で活躍するスタジアムロックバンドになったONE OK ROCKは無敵だと証明するアルバムです。
”解毒”を意味するこのアルバムのタイトルは、世界で蔓延する不安は恐怖、そういったものをこのアルバムで少しでもデトックスしてほしいという願いを込められてつけられました。
2020年4月からのコロナ禍が明けても、世界はちっとも良くなりませんでした。
2022年2月ロシアがウクライナに侵攻し、ウクライナ戦争が勃発。
2023年10月にパレスチナとイスラエルの紛争が勃発。
2024年11月に再びトランプ氏が大統領に選出。世界の分断はより進むことになりました。いきなり各国へ関税の強制引き上げを要求したり、アメリカ国内に住む移民の方々を排斥する運動を繰り返しています。
コロナ禍をきっかけにむしろ世界の断絶は進んだのです。ともに結束することもなく、SNSで監視しあい、なにか不祥事を起こせばここぞとばかりに攻撃する、現代はそんな世界のあり方を是認しています。
ONE OK ROCKはこの世界の分断を、ロックを、音楽を通じて、癒そうとしました。
Takaのインタビューの中で「現代こそ、ロックが必要だと思う」という発言をしていたのを覚えています。
アメリカでは今、ほとんどの曲にギターは使われていません。打ち込みのシンセ、打ち込みのドラム。
しかし、LINKIN PARKの奇跡の復活劇やFoo Fightersの活躍など、現代でも次第にギターロックへの関心が再び高まってきているのを感じます。
ギターロックは会場の観客の心を一つにすることができます。
もちろん、それはレディー・ガガやテイラー・スイフトにだってできるのでしょうが、みんなで拳を高く掲げて合唱するようなライブが彼女たちにできるのでしょうか?
今こそ、このアルバムのようなスタジアムロックが評価されるべきなのです。
力強い8ビートにグルーヴの効いたベース、強靭なディストーションギター、そして、天高く舞い上がらんとするハイトーンのボーカル。
ロックでしか共有できない悲しみがあり、埋められない孤独があります。
世界にはびこる不安に立ち向かうために、彼らはこのアルバムを作ったのだと思います。
歌詞で注目したいのは楽曲の一部に日本語が使われていることです。
ONE OK ROCKは海外へ進出するために一度、完全に日本語を封印していた時期がありましたが、前作「Luxury Disease」から日本語の楽曲が収録されるようになり、今作でも本当にごく一部ですが、日本語が使われています。
それも使い方がすごくナチュラルと言うか、作曲の段階で日本語だったからそのまま使おうという感じなのです。
そこが少し意外というか、もちろん、海外の人はその日本語の部分は意味がわからないわけで、あとから英語に直すこともできたはずですが、そうしなかった。
発想が柔軟になってきているというか、「別に日本語があってもいいじゃん?」というマインドになっていることが変化を感じる部分です。
アメリカビルボードチャートでは、最近ではバッド・バニーやロザリアなどのスペイン語曲が流行っていることもあり、やはり何語であるかとか、歌詞がどんな意味なのかということは、そこまで考慮されれなくなってきているのかなと感じます。
海外のライブでもスタジアムで日本語の部分はそのまま歌うのかな?と想像すると、少しだけ誇らしい気持ちになりますね。
2025年はラテンアメリカツアーに北米ツアー、ヨーロッパツアーと駆け抜けたONE OK ROCK。
会場もアリーナやスタジアムがほとんどで、世界を股にかけるスタジアムロックバンドとして成長したONE OK ROCK。
このアルバムは、混迷の時代に一筋の光を灯すかのような祈りに満ちた一枚です。
