映えある第1位はVaundy!
日本語曲なのに洋楽のように聞こえるマジック
Vaundyを1位に選んだのはこのアルバムがあまりに画期的だからです。
確実にJ-POPなのにビートやコードは洋楽そのもの。ビルボードチャートにのるような洋楽のテイストを持ちながらもそれを日本語で歌いきっている。
これが画期的なのです。
元来、日本語は音楽には不向きだと言われてきました。英語とはイントネーションの考え方自体が違うからです。ですから、J-POPは洋楽とは違う方向を向き、常に独自の路線を貫いてきました。それがガラパゴス化した現在のJ-POPに繋がっています。
しかし、この「replica」に収録された曲たちは違います。
洋楽のビートを持ちながらJ-POPとしても完成されている。
”邦楽なのに洋楽っぽい”のです。
歌からビートを感じる、そこにはVaundyの歌唱力と圧倒的作曲力に由来するものです。
このアルバムの曲はほかのJ-POPとはメロディのビート感が異なります。
メロディを聞いただけでビートが伝わってくる、そんな作り方をしているのです。
これは長年誰もが夢見て失敗してきた方法論なのです。
これだけの曲がかけるのなら、もしかしたら日本語でグラミーを取ることも夢ではないかも…。と思えてくるのです。
今、日本人でグラミーに一番近いのは、米津玄師、常田大希、YOASOBI、そしてVaundyです。
これら4組の作る音楽は他を圧倒するほどの完成度と独自性を兼ね備えています。
ビルボードでも戦っていけるだけの力量を誇っている。
だから、まさに2023年は邦楽革命の年だったのです。
すべての曲はなんらかのレプリカだ
ここでこのアルバムについてさらに深掘りしていきましょう。
まず、このアルバムは2Discとなっています。
Disc1は完全新作、Disc2はこれまでに配信リリースしてきた曲のベスト盤となっています。
もちろん、注目したいのはDisc1です。
Disc2からDisc1に入ってこれるようにしたのが賢いですね。
Vaundyはインタビューでこう語っています。
「すべての曲には元になったオリジナルが存在する。だから、僕が作る曲はレプリカなんです」
Vaundyは過去にどういう曲がヒットしたのか、それをすべて聞いて、その中からエッセンスとして抽出して自分の曲に落とし込んでいるのです。
それは盗作なのではないか、という人がいるかもしれません。
しかし、そもそもこの世の中に完全なオリジナルなど存在しないのです。
King GnuはUKロック、特にArctic MonkeysやOasis、Radioheadからの影響を拭えません。
米津玄師はJ-POP、特に歌謡曲からの引用がよく見られます。「Lemon」なんかはもろに歌謡曲です。
YOASOBIは初音ミク以降のネットミュージックを引用しています。
これと同じように、VaundyもJ-POP、洋楽のポップスからの引用をしているのです。
結論、それが自分の作品に落とし込めるのであれば、引用だろうと影響だろうと関係ないのです。
そして、Disc1最後の曲「replica」。
この曲はデヴィッド・ボウイを引用して曲調から歌い方までトレースしています。
”That’s the replica.”
僕もそう嘘じゃないと言う
彼の背に宿る羽は”I”を語っている
Vaundy「replica」
Vaundy自身も「これはレプリカだ」と認めています。そのうえで、「I」つまり、自己・自我を歌っている。
レプリカだけど、その曲はたしかに自分のものだと宣言しているのです。
この「レプリカ」という考え方はそのままヒップホップのサンプリングの技術と繋がります。
ヒップホップではレコードの一部を録音して曲に使うことがよくあります。
それを自分はやっているに過ぎないのだと。
ここまで確信犯的にJ-POPを変えようとしているアーティストを僕は見たことがありません。
彼は今まで築かれてきたJ-POPの歴史に洋楽の因子を加えようとしているのです。
その化学反応がどうなるのか、僕は今後が楽しみで仕方ありません。