長らくBass Ball Bearを聴いていなかった。僕が初めてライブハウスでライブを見たのは秋田LIVE SWINDLEで行われたチャットモンチーとベボベの対バンだった。今思うと超貴重なライブだったように思う。
ベボベが新人バンドとして売れ始めたのは「17才」や「Changes」のあたりだったように思う。ずいぶん古い曲になってしまったが。その当時は青春をバンドで体現するバンドとして、さわやかで切ないメロディが印象的だった、とてもポップなロックバンドだった。しかし、彼らが変わっていくのは大きなきっかけがあって、ギタリストが突如失踪したのだ。たしかツアー中だったと思う。急遽、サポートを入れて対応したが、以降、音信が完全に途絶え、脱退させざるを得なかった。そうして4ピースから3ピースになって、どうしよう、となったわけだ。
思考錯誤した結果、新たなバンド像を打ち出そう、と心に決めた。それ以降、べボベのサウンドは一変してしまう。R&Bをバンドでやりだしたのだ。ベースをファンキーに刻み、ギターも16ビートが増えた。これをR&Bと呼べるかどうかは議論が分かれるだろうが、僕は確実にR&Bだと思う。今までR&Bをバンドでやった人はいなかった。そこでパイオニアになろうという戦略があったのだろう。しかし、それが結実するまでには時間が必要だった。そして、本作「C3」が完成形だろう。
驚くべきことに、このアルバムは徹頭徹尾三人だけで鳴らせる音しか入っていない。ダビングもない。だから音数は極端に少ない。J-POPなんかと比較すると寂しい感じを受ける。しかしそれがいい。ソリッドに音像をまとめることにより、よりビート感が前に出て、メロディが際立つようになる。これはある種発見だった。3ピースでここまでオープンなサウンドを作り上げられるのか、と。
そして、ここがすごいのだが、本作にはラップの曲もある。「EIGHT BEAT詩」だ。この曲はベボベの今までの歩みを総括し、なおかつ支えてくれた先輩バンドマン、スタッフ、ファンに感謝する曲だ。
突然もげた片翼 狂うバランス 無ざまにはばたくイカロス
長い青春 終わるチャイム いやこれは逆転のための合図
だったら試す どれっくらいいびつになろうが地力の三点倒立
ギター・ドラム・ベース 輝くフレーズ 豊穣の季節
Base Ball Bear「EIGHT BEAT詩」
むしろギタリストが抜けたことをチャンスととらえて、サウンドの改革を図った。そしてそれは成功した。ここ数年で離れたいったファンも少なくないだろう。ベボベに昔のような青春ロックを期待する人は多いだろう。僕もそうだった。しかし、今彼らは実験ムードから抜けてこうして素晴らしいアルバムをたった三人で作り上げた。そしてこのバンドサウンドは唯一無二のものだ。誰にもまねできないオリジン。そこには翼は折れても折れない心があった。