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ディスクレビュー-tricot「真っ黒」

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tricotはUSインディー直系のサウンドを鳴らす、オルタナロックバンドである。そのtricotがメジャーデューすると聞いた時は驚いた。しかも自主レーベルではあるものの、所属はあのavexだ。なぜ、あの天下のavexがtricotをメジャーデューさせようと思ったのだろう? 長らくインディーのならず者として名をはせてきたtricotがなぜメジャーに行こうと思ったのだろう?

しかし、そうした疑問もアルバムを聴けばわかるような気がする。このアルバム、Sonic Youthかと思うぐらいのバリバリの不協和音とバキバキのカッティング、プログレかと思うくらいのテクニカルなプレイ、どれをとってもこれがメジャーの音だとは思えない。しかし、歌のメロディが格段にポップになっている。サウンドの印象はそのままに歌がグレードアップしているのだ。だから、歌モノとして聞くことができる。USインディーは歌は飾りみたいに思っている節があるので、歌詞も意味不明だったり、それよりもサウンド、アレンジにくせのあることを言えるのが通例なのだが、今回は歌がまずはじめに心に飛び込んで来る。こんなにいいボーカルだったのか、と思わされる局面もある。

つまりは、そこだ。彼女たちは明確に勝負に出ている。メジャーに行く覚悟をして、もっと広い層に自分たちの音楽を届けたいと希求している。それと、近年のオルタナロックの全盛、King Gnuが筆頭だが、そういう音楽情勢を鑑みた結果、avex側も勝機があると思えたのだろう。両社の意思の合致があってこのアルバムは作られた。そうでなければここまでインディーとメジャーが一体になったアルバムはできない。avex側もちょうどKing Gnuに続くインディーバンドを探し求めていたのかもしれない。今はみんなサブスクで音楽を聴くから、このバンドはメジャーだとかインディーだとかは関係ないし、そもそもわからない。Tune Coreでアルバムを出して世界的に評価を受けてる日本のバンドだっていくつもある。その境界を完全に破壊する爆弾、それがtricotだ。