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ディスクレビュー-雨のパレード「BORDERLESS」

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雨のパレード渾身のアルバムが素晴らしい。前作、「Reason Black of Color」では幾分、前衛音楽的な、実験性に富んだ作品だった。バンド自身もその実験を楽しんでいるようだったので、このバンドはもうこういう方向性で行くのだろうと思っていたが、この新作「BORDERLESS」のなんとポップなことか!

一曲目、「BORDERLESS」のシンガロングでいやがおうにも気持ちが高揚する。なにより、前作では希薄だったメロディの力が全曲に宿っており、一度聴いたら忘れられないメロディが一曲に一つはある。また、アレンジも前作よりも生音が増え、よりバンドの味、グルーヴィーさが加わったからこそ、この突き抜けたポップ感がある。

そこには明確にバンドの戦略が見てているし、やはりこのままアンビエント・テクノの界隈にいたくない、打ち込みを入れながらももっとポピュラリティを獲得できるサウンドを手に入れたいという意思表示を感じる。もちろん、前作のような完全打ち込みのサウンドもある。しかし、その曲でさえももっと素直に率直になっていて、サウンドに広がりが生まれている。ただ幻想的なサウンド、人をトリップさせる音響彫刻的なサウンドではなく、ここにいたってようやくシンセを鳴らす意味や自分たちなりの鳴らし方がわかってきたのではないだろうか。

2020年の邦楽業界もどんどん動き出している。今まで実験的でいいと思っていたバンドたちが明確にポピュラリティを獲得し始めている。これは音楽産業全体に対する地殻変動となるだろう。まだ実力を隠しているバンドが大勢いるのかもしれない。そして、ヒゲダンやKing Gnuのように突如としてメジャーシーンに躍り出るのかもしれない。

雨のパレードはメジャーシーンに躍り出るチャンスを明確にこのアルバムで手にした。きっと今年の夏フェスは盛り上がるだろう。今後どのような成長を遂げていくのか楽しみで仕方ない。