Dua Lipaの新譜だ。Martin Garrixとの超名曲「Scared to Be Lonely」で話題を呼び、去年のグラミー新人賞に輝いた逸材。
前作「Dua Lipa」はEDM曲が多かったが、今作でサウンドメイキングは一変した。まず、耳を引くのはファンキーで圧倒的な存在感を誇るベース。エレキベースの場合もシンセベースの場合もあるが、ベースとドラムトラックとボーカルのみというコードなしの超シンプルでそれでいてビートを強調しまくった新しいスタイルを確立しており、おもしろい。
現在、邦楽、洋楽問わず、ベースの重要性が高まってきている。これは、トラップがドラムとベースだけという編成で、それが大流行したことが一つと、ビリー・アイリッシュの「bad guy」がドラムとベースだけなのにポップスとして浸透したことが要因となっている。
本作はとにかくビートとベースの絡みを重視したノレるダンストラックであり、これが彼女なりの今のダンスミュージックなのだ。
それはもはやジャンル分け不可能である。テクノもディスコもファンクもEDMも踊れる要素はとにかく詰め込んで、最上級のダンスミュージックに仕上げた。
現在はもはやジャンルという区分けが存在しない。アーティストはサブスクで音楽を聴いて育ち、ビートルズもオアシスもAviciiも一緒くたに聴いてきたからこそ、作為的に、ではなく極めて無意識的にそれらのジャンルを混ぜ合わせることができる。そのようにしてこうした全く新しい音楽が生まれてくるのである。
シンセの割合もまだ多いが、そのほとんどがアナログハードシンセに変わり、ソフトシンセ特有のハイ上がりなサウンドではなく、重心の低い太いサウンドになっている。また、ギターやピアノのバッキングも16ビートで黒人的なビートに仕上がり、80年代にマイケルジャクソンが実現したようなデジタルファンクのような仕上がりになっている。それでいて真新しく響くように設計されているところがこの作品の素晴らしいところだ。