本当はもっと上に入れたかったんですが…。
もはや今年の顔といっても構わない、大ヒットしたOfficial髭男ismの初のメジャーアルバム(!)がこれだというのだからすごい。
とにかくどの曲もメロディがいい。本人もインタビューでヒゲダンは”グッドメロディー”を追求するバンドだと言っていた。まさにその通りで、アルバムの中には一曲も捨て曲はない。アルバム曲がいいというのはやはり音楽通としてはポイントが高い。
そして、このバンドの最大の特徴でもあるボーカル&ピアノという異色のポジション。楽曲の中でもピアノの立ち位置は非常に重要だ。バンドでここまで目立つピアノ、もしくはキーボードはいなかった。いても少なくともボーカルはやらないだろう。そして、藤原聡、彼はおそらく幼少期からピアノを習っていたのだろう。随所にアカデミックな、クラシックピアノ的アプローチが光る。そこが実にクレバーだ。
また、ピアノとともに比重が高いのがブラスやストリングスだ。これがいい味を出していて、曲に深みを与えている。この辺はプロデューサーがアレンジを組むのかもしれないが、バンドでここまでアカデミックなアレンジを組むのは他に例がない。だいたいバンドマンは自分たちの楽器を主張させたいからそういうサポートになってしまう楽器は避けてしまう。しかし、”グッドメロディー”を際立たせるならアレンジも自由にやろうというのがこのバンドのスタンスなのだ。
僕は「Pretender」は一つのラブソングの発明だと思っている。
Official髭男dism – Pretender[Official Video]
この曲、「君が好きだ」とか直球な言葉を一切使っていない。とても遠回りな表現をしている。そして最後にキラーワードである「君はきれいだ」をそっと、さりげなく歌う。(まぁ、ぶっちゃけ歌いだしでラブストーリーっていう単語が出ているけれども)これは非常に新しいと思った。今までのラブソングの定型に疑問符を投げかけるような、直截な言い方には価値がなくて、それをどう伝えるか、その遠回しな表現にこそ愛情が宿るような、そんな曲だ。
正直、彼らがメジャーデビューして一年しかたってないという事実は本当に信じがたい。しかし、ボーカルの藤原聡は28歳だというから割と下積みが長かったのかもしれない。彼らは我々にまったく新たな、クレーバーでフレキシブルなバンドの在り方を問いかけてくる。いわゆるギターロックでガンガン鳴らすようなロックバンドはもう出てこない。彼らのような柔軟にシーンにマッチしていけなければ埋もれてしまうのだ。