正直に言います。この作品を理解するまでに二週間かかりました。
UVERworldは前作「TYCOON」でロックバンドとしての在り方を問うバンドサウンドとしての傑作を生みだした。そして豪華4ディスクにもなるベスト盤を出し、UVERworldのファーストシーズンは終わった。
そして「UNSER」からセカンドシーズンが始まったのだ。
そのサウンドの革新性。ギターをほとんど鳴らさず、シンセがサウンドの中核にある。しかも、その音は最新のジャンルであるフューチャーベースやトラップから派生した音だ。もはやこれをバンドサウンドと呼ぶことはできない。しかし、それをバンドが挑戦することに価値があるのだ。
「AFTER LIFE」
”いまだに俺も生きるべきか死ぬべきか考える
お前のこと思い出すと踏みとどまれるよ”
「無意味になる夜」
”すでに終わってる音楽業界?
もう終わってるバンド自体?
ならなんで毎日俺たちはこんなに楽しいんだよ?”
UVERworldは常に戦って、努力して登りつめ、そして頂点にたどり着いたらまた新しい山を見つけてまた一から登って行ってしまうようなバンドだ。
「Q.E.D」という曲のMCで必ずTAKUYA∞はこう言う。”俺も昔はお前たちと同じ場所にいた”。UVERworldは挫折の連続だった。初めてのヒット曲が「儚くも永久のカナシ」。しかし、この曲のヒットのせいでUVERworldはバンド界隈から嫌われてしまうことになる。女受けしそうな恋愛の歌詞だったから。これはなにも誇張ではなく、実際、数年前までUVERworldはロックフェスには出たくても出られない、オファーが来ない状態だった。そんな中、発案したのが、男限定のライブ、もう毎年恒例となった「男祭り」だ。最初は300人キャパだった。そこからZeppクラスになり、アリーナになった。その中でどんどんUVERworldの歌詞も変わっていった。恋愛の歌詞なんてもうほとんど書かない。書くのは己の人生の哲学、とにかく熱い言葉を書きなぐるような熱量。UVERworldはお客さんの熱量を受けて進化していったバンドであるのだ。男祭りの一日を噛みしめて曲を書くのだろう。
そして、今年、男祭りは節目を迎える。去年の男祭りでTAKUYA∞は宣言した。「俺はドームで男祭りをやりたいと本気で思ってるから」
そしてそれが今年、実現するのだ。なんだか感慨深い。僕はもちろん見に行けないのだが、即SOLD OUTだったみたいだし、一ファンとして本当にうれしい。なにより宣言したことをしっかり実現してのけるのがひたすらかっこいい。
UVERworldのファンは、もしかしたらその急速な変化についていけない人もいるかもしれない。それでも、UVERworldは先に進みたかったのだ。
ロックバンドでヒットが出ることなんてもうなくなった。古典的なロックバンドが勝つ手段はもうない。だったら、自分たちが変わって、道を指し示すしかないだろ?とTAKUYA∞が勝ち笑いしている気がする。
このアルバムは今後の邦楽ロックシーンを180度変える可能性がある、革新的な作品だ。保守的なロックを鳴らすのではなく、時代に順応したサウンドを。いずれ邦楽史を振り返った時に、このアルバムはようやく正当な評価を得るだろう。2019年にこんな音をもう創り出していたのか!と。