今年の私的アルバムトップ10も昨日の発表を持って完結しましたが、実はもっと紹介したいアルバムがあるのです！
というわけで、番外編！
今回は洋楽からスペイン語のアルバムを紹介したいと思います。
実はトップ10を書くに当たって、「今年は洋楽からのランクインはありませんでした」と書いたのですが、その後、海外の音楽誌が発表するベスト10を見て、評価が変わりました。
各種音楽誌がリストアップしている中に「ロゼリア」と「バッド・バニー」の名前が多くあったのです。
特に「ロゼリア」はほとんどのランキングで1位を獲得していました。
「バッド・バニー」は実は5年ほど前から曲は聞いていたのですが、アルバムが出ていたことを知らず、聞いてみて衝撃を受けました。
そのバッド・バニーのアルバムを番外編、洋楽編としてご紹介したいと思います。
スペイン語曲がなぜ、今、ビルボードチャートに入るのか？
バッド・バニーはプエルトリコ出身のラッパーです。
プエルトリコは公用語がスペイン語なのでスペイン語でラップします。
これが当時、とても新鮮で、僕が初めてバッド・バニーを認識したのが「Yonaguni」です。
スペイン語というのも新鮮だったのですが、最後にいかにも外国人っぽい変な日本語が入っていて、それが耳に残ったのです。
タイトルも「Yonaguni」ですしね。
この曲について、バッド・バニーは「一度、沖縄に行ったことがあって、そこの雰囲気がとてもよくてこの曲を作ろうと思ったんだ」と話しています。
この曲からバッド・バニーはラテン・トラップを代表するアーティストになり、ビルボードチャートにも度々、ランクインするようになりました。
ビルボードチャートにいまやスペイン語の曲がランクインする時代なのです。
これは日本語の曲や韓国語の曲がランクインするのと同じですね。もはや誰も歌詞なんて聞いてないのだろうし、言語よりもフィーリングとビート、フロウを重視しているのだと思います。
ラテン・トラップというジャンルの発明
このアルバムは、ヒップホップとラテン音楽を合わせたラテン・トラップの一つの完成形です。
ラテンで使われるようなコンガやボンゴのリズムにシンセや打ち込みの音が混ざった、今までに聞いたことのないサウンドが構築されています。
多くの音楽誌が評価する点は、今まで混ざり合うことのなかったアメリカのヒップホップとラテン音楽を結びつけ、新たなジャンルを確立した点にあるのでしょう。
そもそも、トラップで使われるシンセはヨーロッパの生まれですし、そう考えるとこのアルバムはさまざまな国、民族を超えた先に作られているのです。
まさに21世紀にふさわしい革命と言えるようなサウンドとなっています。
バッド・バニーはハーフタイムショーで世界を変える
しかし、自身が移民であるため、今年9月から行われるはずだったアメリカツアーはキャンセルとなりました。
分断の進む21世紀の架け橋になるはずだった彼の音楽は、アメリカという国に否定されてしまったのです。
これは大きな悲劇だと思います。やりきれなかったはずですし、ファンも待ち望んでいたはずなのに「逮捕の可能性があるから」という理由でキャンセルせざるを得なかった。
本当にアメリカという国は、今、どこに向かっているのでしょう？
しかし、希望はあります。
なんとバッド・バニーは2026年の2月、あの名誉あるハーフタイムショーのヘッドライナーを務めることが決定しているのです！
実はこのヘッドライナー選出も一部、批判があったりしたのですが、NFLの責任者が「ヘッドライナーから外すことはありえない」と断言しています。（https://nfljapan.com/headlines/115954を参照）
スーパーボールといえばアメリカのみならず世界が注目する一大祭典です。
そのハーフタイムショーにプエルトリコ出身のラッパーがヘッドライナーを務めるのはおそらく初でしょうし、一躍、脚光を集めることになるでしょう。
このハーフタイムショーが成功に導かれれば、グラミー賞主要4部門も視野に入ってきます。
現時点で、このアルバムは、「最優秀楽曲賞」「最優秀アルバム賞」「最優秀レコード」にすでにノミネートされています！
この混迷の時代に一筋の光として、このアルバムが正当に評価され、移民問題への理解が進むことを僕は望みます。
