7位はRADWIMPSです!
実はもうちょっと上位にランクインさせたかったのですが、今年のランキングも相当レベルが高くて、熟慮した結果、この位置に落ち着きました。
いまや映画音楽も手掛けるRADWIMPSの進化。
すでに彼らはバンドという枠を超えて、音楽集団となっている印象があります。
劇伴で培ったストリングスアレンジを曲に落とし込む圧倒的スケール感
RADWIMPSは深海誠作品「君の名は。」「天気の子」で劇伴を担当し、どちらも日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞しています。
そして、2022年春公開予定の実写映画「余命10年」にて、初の実写作品にて劇伴を担当しました。
君の名は。からすでにそのオーケストレーションの巧みさは垣間見えましたが、そこからの進化は驚くべきものがあります。
特に感じるのはこのアルバムに収録されている「犬じゃらし」。
この曲、実は最初は「猫じゃらし」という曲としてCMのタイアップに使われていたのですが、今回、「犬じゃらし」として大幅なアップデートをして収録されました。
「猫じゃらし」は壮大なストリングスアレンジがありながらも、まだポップスの枠に収まっていあのですが、なんとこの「犬じゃらし」は木管、金管を含むフルオーケストラ!
圧倒的に壮大でスケールの大きなサウンドにただただ呆然とすることになります。
正直、バンドでここまでのストリングスアレンジ、オーケストラアレンジができる人というのはRAD以外にいないです。
そもそも、スケールがバンドという枠組みをすでに大きく外れている。
そもそも、「君の名は。」だってロックバンドが劇伴を担当するなんて前代未聞のことでした。
メイキングなどを見ると、かなり綿密に深海監督と打ち合わせ、レコーディング現場で譜面を書き換えることも…。
きっと「余命10年」ではさらに深化したサウンドが聞けることでしょう。サントラも楽しみにしていましょう!
多彩なジャンルを横断するフレキシブルさ
前半は「犬じゃらし」を取り上げて紹介しましたが、このアルバムには実に様々なジャンルの曲が収録されています。
特に目立つのは「TWILIGHT」でしょう。
このド直球のEDM!
ほかにもラッパーのAwitchをフューチャリングした「SHIWAKUCHA」、R&Bシンガーであるiriをフューチャリングした「Tokyo」など、一つのアルバムにこれほどの振れ幅があっていいものなのか!と言いらくなるような自由奔放さ。
君の名は。以前というのは、やはりRADWIMPSはBUMPとも時代性が近くて、いわゆるゼロ年代ロックバンドとして語られることが多かったように思います。
しかし、君の名は。の成功が彼らを大きく突き動かしたのでしょう。
そこから、ロックからは距離を取り、王道のポップスを志向することが多くなったように思います。
「前前前世」や「グランドエスケープ」からそれはうかがい知ることができます。
また、「棒人間」などピアノを使ったアレンジも増え、野田さん自身がピアノ弾き語りで演奏することもライブでは多くなりました。
これは、バンドとしての武器を増やそうと意識的にそうしていったのではないかと推察します。
実は「絶対絶命」や「×と〇と罪と」あたりのころはRADは少し停滞気味でした。自分のうちの中にある不安をそのまま形にしたような、野田さん自身の不安をぶちまけた曲が非常に多かったと思います。
これは3.11の影響がやはり一番大きいでしょう。
震災当初からRADは被災地でライブをしたいと言っており、これが2013年「青とメメメ」で実現します。
そして、あまりにも大きな出来事がドラマーの山口智史さんの病気による活動休止。
その後、ツアーとどうするかという話になり、「ドラマーがいないのなら、さらに大きな演出で補うしかない」と言って、現在のサポートドラマー2名によるツインドラム体制が固まります。
そして、ここに君の名は。が入ってくるのです。
こうやって振り返ると、それはある種、必然のタイミングで、バンドが変わらざるを得ないタイミングでの方向転換でした。
彼らは自らの危機を武器にして戦ってきたのです。
だからこそ、15周年を超えた今でも、長く愛されるバンドとして、国民的バンドとしての地位を築けたのでしょう。