第8位の発表です!
10位のジャスティン・ビーバーの回でも触れたのですが、8位はオーストラリア出身の新生SSW・ラッパーのザ・キッド・ラロイです!
ラップとポップスの幸福な融合
このアルバムはジャンル的に言うとR&Bなのですが、その特徴はラップとポップスを自在に行き来する歌にあります。
実はこのスタイルはザ・キッド・ラロイが生み出したものではありません。
これはグラミーノミネート経験のある「ポスト・マローン」が生み出した一つのカルチャーであると言えます。
まずは、そのポスト・マローンの曲を聞いてみましょう。
どうでしょうか?
ラップのようにも聞こえるし、ちゃんとメロディを歌っているようにも聞こえます。
これが画期的なことだったんです!
2018年ごろ、トラップというヒップホップのジャンルが爆発的に拡大しました。
その筆頭がポスト・マローンでした。
ポスト・マローンは当時はきちんとラップしていましたし、もっと攻撃的な音像でした。
しかし、このトラップというのはめちゃくちゃ低音がでかくて、暗い音楽だったんですね。
だんだんこの暗さを嫌悪する層が出てきて、徐々にR&Bにシフトする流れが出来上がります。
この転換点を担ったのがポスト・マローンでした。
彼はアルバム「Hollywood Bleeding」でラップと歌を区別なく歌い、ヒップホップとR&Bの垣根をぶち壊しました。
これは日本でも同じようにいえる現象です。
Creepy NutsもAメロ・Bメロはラップで、サビは歌い上げますよね?
やはり、歌ったほうがパフォーマンス的には強いんです!
やっぱりみんな歌ものが好きなんです。
むしろ、メロディがないと落ち着かない、だからラップは聞かない、という層が多く。この層にどうやって訴求するのか?というのは多くのラッパーが悩んでいた部分でした。
そこをポスト・マローンは「なら、混ぜちゃおう!」と言って、もっと大きなくくり、ブラックミュージックとしてのカルチャーを作り出したわけですね。
そして、その血脈はザ・キッド・ラロイにきちんと受け継がれています。
実は、ザ・キッド・ラロイはオーストラリア出身ですので、ブラックミュージックとは遠い距離にあるんですよね。
でも、そこはZ世代。おそらく自らヒップホップのカルチャーに入っていったんでしょうね。
このアルバムに収録された曲はどれも、正統なブラックミュージックということができます。
実はオーストラリアというのはあまり有名人がいません。
英語圏ではありますが、やはり距離的にアメリカから遠いので、カルチャーが育っていない部分もあったのかもしれません。
このアルバムで一躍スターになったザ・キッド・ラロイはオーストラリアの英雄として語られているようです。
個人的にも、こうしたアメリカ文化から遠いところからブラックミュージックというある種、ローカルなジャンルが広がっていくのは実にインターネット的で、現代的だと思います。
BTSが本気でアメリカで戦う時代です。
オーストラリアから世界を攻めてもいいじゃない、というお話。