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私的アルバムトップ10 4位 スピッツ「ひみつスタジオ」

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4位はスピッツ!

いつまでもみずみずしいポップスソング

スピッツといえばデビュー32年目の超大御所バンド。

なのにこのアルバムはまるで新人かのようなみずみずしさと新鮮さに満ちています。

「美しい鰭」はとにかく歌詞が美しい。

流れるまま 流されたら

抗おうか 美しい鰭で

壊れる夜もあったけれど 自分でいられるように

スピッツ「美しい鰭」

”壊れる夜”という部分にこのアルバムがコロナ禍で制作されたことが頭をよぎります。

コロナ禍といえば取り上げたい曲が「讃歌」。

枯れてしまいそうな根の先に 柔らかい水を染み込ませて

「生きよう」と真顔で囁いて

ライフが少しずつ戻るまで無駄な でも愛すべき時間

聞かせてくれた日から

鳥のように 虫のように 風を受けて 時を紡ぐ

君のそばにいられるなら

強い雨も砂嵐も 汚れながら進んでいきたい

またたく間の喜びさえ

今は言える 永遠だと

スピッツ「讃歌」

コロナ禍でライブも人と合うことさえも制限された息苦しい世の中で、たったひとつ、君のそばにいられるなら、その瞬間は永遠だ、そばらしい歌詞ですね。

愛情と覚悟と優しさに満ちた実に草野マサムネさんらしい歌詞だと思います。

珠玉のポップソングが並ぶ中でも、刹那の喜びや一瞬のきらめき、あるいはその対局にある孤独が描かれているのがこのアルバムの特徴だと思います。

それはやはりコロナ禍を通して草野マサムネさんの世界の見え方が変わったから、それが反映されたんだと思います。

後世の人はこのコロナ禍を後に振り返ってどう言うんでしょうね。あの時は大変だったなと昔を懐かしむのでしょうか。

その中に一つ歌というものがあると思います。

苦しい時期に聞いた曲ほど記憶に残ります。

その悔しさや苦しさを和らげてくれるのが歌です。

このアルバムは後に聞き返したときに、そんな思い出を思い返すためのタイムカプセルになると思っています。

あんな時代があったなと思い返せるように草野マサムネさんは歌詞にその思いを刻み込んだ。

この功績は大きいと思います。

みんな、直接、コロナ禍に歌詞で言及することは避けていましたから。

このアルバムがリリースされたのが今年の5月。

ちょうど5類引き下げのタイミング。

まさにこれから暗闇から覚めるのだというタイミングでリリースされた、一つの時代が刻み込まれたマスターピースとなる一枚です。

いつ明けるともわからない暗闇の中で、自分のそばにある幸せを見つけた、そんなアルバムだと思います。