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TK from 凛として時雨「彩脳」コラボレーションでよりTKの深淵は深まった

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TKのソロアルバム4作目がここまでの傑作になったのは、多くのタイアップと、そして多彩なコラボレーションが実現し、コラボ相手がTKの心の闇の深淵をさらに深く掘り下げていくことができたからだ。TKはソロ活動に対して、大きなスランプを抱えていた。今回のアルバムも直前まで粘ってやっとできたのだそうだ。TKはまず、バンドマンである。バンドのフロントマンであればおのずと音楽性というのは絞られてくる。だからやりやすい。しかし、ソロになって、TKは常に新しい取り組みをしてきた。1st「Flowering」、2nd「Fantastic Magic」2作とも凛として時雨ではできないこと突き詰めた結果できあがった、傑作である。しかし、彼は一度失速した。3rd「white noise」は前二作を超えるものではなかったと思う。もちろん、曲がよくないわけではない。しかし、「white noise」は「これは凛として時雨でもいいのではないか」という曲がちらほらあった。狂気の絶叫とギャンギャン鳴るテレキャス、まさに凛として時雨の十八番である曲が何曲かあった。もちろん、新たな試みがなかったわけではない。「Secret Sensation」は初めて大胆に打ち込みを取り入れ、ダンサンブルな曲に仕上がった。「like there is tomorrow」の美しさに心を奪われたりもした。しかし、アルバムというものは何曲かの采配で印象が変わってくるものなのだ。少なくとも、僕は「white noise」を凛として時雨的なものと解釈した。おそらくそこから彼の葛藤は始まっていたのだろう。TKは考えたはずだ。凛として時雨も再始動し、そのうえでソロをやる意義、時雨的でないもの、新しいものを生み出すためにはどうすればいいのか。

きっかけはおそらく「東京喰種:re」ラストシーズン主題歌「katharsis」からだろう。TKはやはり「unravel」で世に出た人だから、そのアニメのラストシーズンの主題歌、というのは大きなプレッシャーになったに違いない。「unravel」を超えなければならない、それができるのか。結果として彼はそれを成し遂げた。それはTKが東京喰種のよき理解者であり、そのラストに寄り添うことができたから。そして、本アルバムはほとんどがタイアップなのだ。彼は理解したのだ。誰かの作品に触発されたほうが自分は自由に音楽を創れるのだと。

そして、特筆したいのが、コラボレーションの数々。まず一曲目の「彩脳 -sui side-」での東京喰種作者・石田スイの作詞としての参加。これはTKの側からオファーしたらしい。東京喰種:reの時に提出した音源が、「katharsis」と「彩脳」だったらしい。結果的に 「katharsis」 が採用されたが、「彩脳」を石田スイが気に入っていて、ならば、とTK作詞バージョンもあったのに石田スイに作詞を依頼したのだ。だからこれは「-sui side-」であり、実際はTK版もあった。石田スイの歌詞を採用したのであり。ほかにも、「copy light」はあの又吉直樹が歌詞の監修をしている。この曲はすでにあった曲で、ライブでも披露されていた。しかし、もうひとひねりしたいということで、こちらもTK側からオファーし、実現した。結果、より文学的に、登場人物の関係性が明確になった。MVでは又吉直樹本人も出演し、掌編の小説もMV世界を彩っている。

「インフィクション」はゲスの極み乙女。のキーボード・ちゃんMARIが参加している。このコラボの仕方も独特で、最初にちゃんMARIに「なんでもいいから適当に弾いて送って」と言って、そのあとにTKが音を足して完成形になった。なんとも投げやりだと思うかもしれないが、つまり、本作で彼はコラボすることによって、刺激を受けることによってより自分のアイデンティティを覚醒させようとしたのである。

「melt」にもヨルシカのボーカル・suiが参加している。これもTKがsuiの歌声にほれ込み、熱烈なオファーのより実現した。ヨルシカファンからするとsuiが全く違う発声をしていて非常におもしろい。

TKは人の力を借りることによってスランプを見事乗り越えて見せたのである。どちらかというと孤高の人間であったTKがその一歩を踏んでくれたことは素直にファンとしてうれしい。これから、より大きなアーティストとして、邦楽界を革新していくだろう。次はどんなマジックを見せてくれるのか、今から楽しみで仕方ない。