はい、5位で言いました通り、4位はYOASOBIの1stアルバム「THE BOOK」です!
このトップ10はあくまで僕の独断の偏見で決めています。
そして、このランキングで最も重視しているファクターは「そのアルバムがどれだけ音楽シーンを変えたか?」です。
それで言うと、YOASOBIは普通の人ならトップ3に入れそうなところですが、みなさんご存じの通り、このブログは一筋縄ではいきません(笑)。
もっと音楽を革新させたアルバムがありますので、4位、5位に落ち着きました。
それでも今年のアルバムもレベルが高かったです(毎年言ってますが…)。
それだけ、サブスクが音楽を変え、聴き方を変え、作り方さえ変えてしまったのです。
YOASOBIはサブスクの帝王であり、そして、現代の代弁者でもあります。
そして、YOASOBIが音楽シーンに与えた影響というのは、やはりラップトップ一台で曲をつくる、ということが大きいのではないでしょうか?
ボカロPがこれほどまでに注目を集めるようになったのもAyaseさんがきっかけです。
僕も最近では自信満々に「ボカロPです!」って言えるようになりました。
今までは隠してたんですけどね…。
それほどまでに、「ボカロ」という存在をきわめて平易なものに変え、当たり前にしました。
そして、ボカロPをコンポーザーとして採用するのはもはや当たり前になってきています。
また、AyaseさんはYOASOBIデビュー時26歳でした。これはかなり遅咲きな部類に入ります。
しかし、音楽業界も実力があるなら年齢問わず登用しよう、という流れが生まれてきているような気がします。
例えば、「セーラームン太郎」でメジャーデューしたマハラージャンなどは普通に社会人をやっていて、趣味として音楽をやっていたのに、YouTubeで目を付けられ、デビューを決めました。(年齢非公開)
「うっせぇわ」作曲のsyudouさんも当時25歳でした。しかし、いまやボカロPではなく、セルフボーカルでアーティストとして活動しています。アニメタイアップなどもこなす、超メジャーアーティストになりました。
このようにYOASOBIが音楽業界に与えた影響というのは計り知れないものがあります。
しかし、一方で、特にこの「THE BOOK」に収録された曲について言われたのが、「メジャーにしては音がしょぼくないか?」という指摘でした。
これはまさにその通りです。
なぜなら、当時、AyaseさんはLogic Proという作曲ソフトに付属している音源のみで作曲していたからです。
これ、DTMerにしかわからない話だと思うんですが、DTMをやる、ボカロPをやるとなると云十万くらい総合すると有料音源を買って、制作しています。
今はプロのアーティストもほとんどの人が打ち込みで、パソコン一台で作曲し、納品する時代ですので、実はレコーディングって予算が潤沢にないとできなかったりします。
例えば、ドラマの劇伴とかはほぼ全部打ち込みです。あんな壮大なサウンドはオーケストラを呼んで収録しなければならないほど、今の劇伴はレベルが高いので、ドラマ規模だと潤沢な予算がないと、よっぽどのことがない限りレコーディングしません(劇伴の規模によります)。
そのために、作曲家はそのまま納品されることを想定して制作するので、オーケストラ系だと云十万の音源を買っておかないと対応できないんです。
これは劇伴作家に限った話ではありません。
ボカロPも同じです。
やっぱり音源のクオリティが低いと曲が良くても再生数はあがりません。限界があります(Orangestarさんなど例外はいます)。
なので、やっぱりボカロPもけっこう高い音源を使っています。
付属のソフトはやっぱり品質が低いので(ソフトによって違いはあります。Logic Proは割と質が高いです)、基本的には有料音源を買い足して使っていくことになります。
ところが、Ayaseさんはとにかくお金がなかったんですね。
家賃を払えないけど、東京にはいたいので、東京にいる大学生の妹さんの家に居候していたという話は有名です。
パソコンを買うお金もなくて、6年物のMacbookを中古で買って制作していたそうです。そのMacbookが「たぶん」まで使っていたそうで、再生するたびにブツブツ音が途切れたそうです…。
ところが、Ayaseさんが2019年3月に投稿した「ラストリゾート」が爆発的にヒットし、プロデューサーの目に留まり、YOASOBIが結成されます。
「夜に駆ける」も実はけっこう音がちゃっちいんです。
でも、その音があまりにも細いピアノの音とか、明らかに打ち込みで、リアリティがないベースに価値があったんです。
こういう音を普段、多くの人は聞いたことがなかったと思います。そこに息継ぎのないノンストップボーカルが重なって、あの曲はヒットしたんです。
やはり「THE BOOK」の音は安っぽくて、現実から離れている音がするんですが、そこがいい。
YOASOBIというプロジェクトにとって生っぽい臨場感ある音は不釣り合いだったんです。
これくらい、リアルじゃない音が入っていたほうが、不可思議・ファンタジー感が出て、そこがフックになっている。
もし、これがめちゃくちゃ高級な音源で作られてたらと想像すると…、まぁ、別物になりますよね。
ライブではほぼすべての音をライブで鳴らしているんですが(ふつうはシーケンス使うんですけどね…、すごい!)、これが音源に入っちゃうとYOASOBIの世界観が若干、ずれてしまうと思うんです。
一気に現実感が出て、世界観に浸れなくなってしまう。
だから、僕たちが今まで盲信していた「高い音源を買って、いい音で納品しなければいけない!」という常識は間違いであったんです。
やっぱり、曲が良ければ、音質なんて問題ではない。
色が少なくても、それを鮮やかに見せるアレンジテクニックがあればいい。
そして、YOASOBIは現在も、Ayaseさんのラップトップ一台でほとんどの曲が作られています(もちろん、レコーディングすることもあります)。
これは、日本が世界に近づいた、という証でして、ビリー・アイリッシュに代表されるように、世界中の音楽のほとんどはラップトップ一台で作られてるんですね。
ところが、YOASOBI以前というのは、いまだにバンドがシーンをけん引していて、そのバンドも自分でデモは作れなくて、スタジオに集まって曲を作っていた。
これ、思ったより経費がかかるんですよ。スタジオをおさえるとエンジニアもおさえないといけないんで。
ところが、コロナ禍に入って、そもそもスタジオに入れない、となり、躍起になってバンドマンはやっとこさ自宅でデモが作れて、オンラインで共作したりできるようになりました。
これって世界では当たり前だったんですけど、日本ではコロナになってやっと実現されました。
YOASOBIのデビューは2019年11月。つまり、YOASOBIはコロナの時代を知らず知らずのうちに先取りしていて、コロナのタイミングで爆発的に音楽シーンを変えていった。
実はタイミングも神がかってたんですよね。
というわけで、YOASOBIは日本の音楽シーンの先駆者だった!ということで記事を締めたいと思います。