5位はYOASOBIの二枚目のアルバム「THE BOOK 2」!
はじめに言っておきますが、4位は同じくYOASOBIで「THE BOOK 1」です!
去年、今年と一度も止まることなく驚異的な速度で急成長していったYOASOBI。
これはもはや社会現象と言って過言ではないでしょう!
今回は12月にリリースされた「THE BOOK 2」について解説したいと思います!
より物語性の強い楽曲へと変化
このアルバムで取り上げたい曲は2曲あります。
「大正浪漫」と「もしも命が描けたら」
この2つは今までのYOASOBIとは明らかに違う書き方で歌詞が書かれています。
以前、Ayaseさんは「小説を楽曲するにあたって、大変なことはないのか?」と聞かれたとき、こう答えていました。
「僕はその小説の主題歌を書くつもりで作っている」
それは今までのヒット曲「夜に駆ける」、「怪物」などの楽曲に象徴されていると思います。
どの曲も小説の物語を語るような歌詞を書いてはいません。
それぞれが断片的に、ちょうどアニメのオープニングテーマのようにダイジェストとして物語が存在しています。
実は、これは歌詞を書く上で非常に理想的なスタンスなんです。
「歌詞というのは、文章であってはいけない、詩でなければいけない」
というのが僕の個人的な意見です。
歌詞で説明的なことを書くと、どんどん冗長になっていってせっかくのメロディが台無しになっていきます。
歌で説明的なことを聞かされても感情移入できないですよね?
その辺のバランスがYOASOBIは巧みだと感じていました。
しかし、この「大正浪漫」は、特に最後のシーンなんかはかなり説明的なんですね。
この曲は全体を通して、小説を読まなくてもそのストーリーがわかるように設計されています。
だから、割と説明文が多いんです。
でも、全然、聞いていて苦じゃありません。
なぜなら、ちゃんと歌心があり、詩的であるから。
これはYOASOBIにとって大きな前進だと思います。
「小説を音楽にするユニット」であるならば、やはりその小説のストーリーをしっかりと楽曲に落とし込むことから逃れることはできなかったのでしょう。
しかし、物語と楽曲、この両方をきちんとしたバランスで調整が取れている、素晴らしい作詞だと僕は思っています。
今まで不可能だと思われていたこと、「歌詞で物語ること」を可能にしたんですね。
そして、その成功例をもとに、この「もしも命が描けたら」は作られたのだと思います。
これは実に不可思議な曲だと思います。
この曲は「ハルカ」で小説を書いた脚本家の鈴木おさむさんの同名の舞台・戯曲をテーマにした楽曲とおなっています。
この曲、今までにないくらい物語のボリュームと重みが桁違いなんです。
この曲に関しては、「夜に駆ける」方式にして、主題歌として、俯瞰的に、詩的に描くという方法もあったと思います。
しかし、Ayaseさんはそれを選ばなかった。
それはおそらく、YOASOBIの転換点になるだろうし、より、小説と密接にかかわっていくという決意をしたのでしょう。
この曲に関しては、ストーリーから逃れられなかった。このストーリーをそのまま楽曲に落とし込むんだ、という決意がにじんでいます。
この楽曲の評価に関しては、僕は世の中の人が、ファンがどう感じ、どう思うかは、正直、想像ができません。
これは、かなり賛否を呼ぶ曲だと思います。
ここまで説明的な、ある種、朗読的な曲を、曲と呼ぶことができるのか?
これはその人の基準によるとしか言いようがないのです。
僕個人の意見を言わせてもらえるなら、これはすでに新しい楽曲の形を作り出していると思います。
ストーリーのある曲というのは今までもあったし、特にボカロ界隈では珍しくもありません。
しかし、そのどれもが、ストーリーは断片的であり、だからこそ、リスナーに解釈をあずけ、考察、という一つのエンタメが成立していました。
この曲は、もうこの一曲だけでストーリーのすべてが語られているんです。
極端なことを言うと、舞台を見に行く前にこの曲を聞いていれば結末までわかってしまうんです。
ですが、この曲を聴いた人はおそらく、舞台を見たい!と思うでしょうね。
もっと詳しくストーリーを追いたい!と思うでしょう。
これはもしかすると鈴木おさむさんの采配かもしれませんね。彼ならやりかねない。
でも、結果的にこれが新たな楽曲の形になって、今後、こういうストーリーすべてを曲に落とし込むやり方は、YOASOBIもやるでしょうし、ほかの人たちもやるでしょう。
つまり、これは挑戦状なわけです。
楽曲の中で、ここまで「物語る」ということを純粋に極められるんだぞ、と。
お前らにはこれができるか?
とAyaseさんは言っている気がしてならないのです。
そして、ikuraちゃんの功績も、もちろん、ここでは語らなければなりません。
この曲のメロディはほとんど歌として成立していません。
どちらかというと朗読に近いんです。
でも、聞いてみると、やはり、ちゃんと歌っているし、そのうえで語っているんです。
これは、本当にすごい。
ここまで複雑なメロディを歌えるのはikuraちゃんしか世界にはいないでしょう。
「もしも命が描けたら」はこの先の物語と音楽の組み合わせに大きな化学変化を起こしていく、そういう革新的な曲だ、ということで締めたいと思います。