いよいよトップ3の発表!
第3位は、2023年はこのアーティスト抜きに語れない、YOASOBIです!
日本語曲初となるビルボードチャート1位を獲得した、社会現象となった楽曲「アイドル」
アニメ「推しの子」OP主題歌となったYOASOBIの「アイドル」がBillboard Global 200において日本人最高位となる週間7位、そして、グローバルチャートから米国を除いたGlobal Excl. U.S.において1位を獲得し、通算3週に渡って記録を維持し続けたことはみなさんの記憶に新しいと思います。
この現象はアニメの効果も大きいと思います。ですが、海外の方が「アイドル」の歌ってみたや踊ってみたをTikTokにあげる現象は、それだけではない、楽曲の力が大きな意味を持ってくると思います。
「アイドル」は日本のJ-POPとアニソン、そしてヒップホップカルチャーを横断する刺激的な楽曲となっています。まさにミクスチャー、日本にしかできない荒業だと思います。
また、楽曲はアニメ「推しの子」の第1話と完全にリンクしており、ここではYOASOBIの”小説を音楽にする”というコンセプトが遺憾なく発揮されています。
特に歌詞の最後の一節が涙を誘います。
今日も嘘をつくの
この言葉がいつか本当になる日を願って
それでもまだ君と君だけには言えずにいたけど
やっと言えた
これは絶対嘘じゃない 愛してる
YOASOBI「アイドル」
これは第1話のラストシーン、主人公たちの母親であり、伝説のアイドル「星野アイ」が最後に子どもたちに残した言葉です。
「星野アイ」はアイドルとして生きていくために常に自分を偽って嘘を付き続けてきました。
「愛してる」と歌の中ではいくらでも言えるけれど、本当に口にしたことはない。
だけど、死の間際、子どもたちに最後の言葉として「愛してる、ああ、やっと言えた」といって事切れるのです。
この第1話の感動のラストシーンをこのたった30秒足らずに凝縮してしまえるその才能。
「アイドル」のヒットはもちろん原作・アニメの人気もありますが、“小説を音楽にする”というコンセプトとコンポーザーAyaseの圧倒的作詞力に支えられたものでした。
サウンド面で印象的なのは、イントロのゴスペルとボーカルikuraのラップ。
これは完全にブラックミュージックからの引用ですが、そうとは感じさせない全体のまとまり。
ゴスペルはアニメ「推しの子」の壮大さを思い起こさせますし、ラップはキャラクターを完全に作り込んだ、ぶりっ子アイドルの感じが「星野アイ」を想起させます。
「アイドル」のラップはスキルがなってないという人もいますが、僕はこの形でなければ「アイドル」という曲はもっとごちゃごちゃとして伝えたいことが伝わらない曲になっていたのではないかと思います。
アレンジもそうですがikuraのアイドル感もこの曲の重要なアクセントとなっています。
直木賞作家とコラボした楽曲群
また、このアルバムには直木賞作家4人とコラボした「はじめての」プロジェクトから生まれた4曲も収録されています。
”小説を音楽にする”というコンセプトを掲げる以上、むしろこちらの4曲のほうが「アイドル」よりもチャレンジングであり、大きな意味がありました。
直木賞作家4人が書いた小説がまず先に出版され、その後、YOASOBIが楽曲化していきました。
一曲一曲出るごとに、新たなサウンドのテーマとジャンルの広さを感じさせる楽曲に仕上がっており、もちろん、小説を音楽にするといコンセプトの元、小説のはじまりからラストまですべてを描ききってしまえる作詞力。
これには僕も驚愕しました。アニメのOPではアニメの場面場面をツギハギすればいいわけですが、小説がある場合、そういうわけにもいきません。ですから、これはチャレンジングな企画なのです。
しかし、それを見事にこなし、成功に導きました。
これはアイドル以上のYOASOBIの成長だと思います。
特に僕が好きなのは「セブンティーン」。
重厚なロックサウンドにエッジーなボーカルが加わり、原作の退廃的な空気感が伝わってきます。
「海のまにまに」では穏やかなピアノバラード、「ミスター」では80’sな雰囲気のシティポップ、「好きだ」はキャッチーなポップソングと、小説に沿ってジャンル感を変えているのもさすが。
このプロジェクトを完遂できたことでYOASOBIはまさに”小説を音楽にする”正真正銘のユニットとなったのです。
「THE BOOK3」はいかにYOASOBIが確信犯的に日本の音楽を変えようとしているかがわかる、挑戦と革新のアルバムです。