昨日公開した新曲です。今回はストーリー仕立て、ストリングスアレンジのファンタジックな曲になりました。
今日はこの曲の解説をしようと思うのですが、僕は毎回、詞を書く前に散文詩を書いています。今回はその散文詩を引用したほうがストーリーがよく伝わると思いましたので、未公開の散文詩を公開します。歌詞に表せなかった部分も補完できると思います。
<散文詩全文>
最果ての星
その竜は最果ての星で眠る
太陽からはるか遠く
彼は地球から逃れてきた
人間だったころのことを思い出す
たとえば、秋に木の葉が枯れゆくとき
たとえば、冬に雪に埋もれるとき
その小ささを、寂しさを、痛みを、思い出す
そのたびに胸が温かくなるのはなぜだろう
僕は望んで竜になったのに
彼女の姿を夜に思い浮かべる
優しげな微笑み、その温かな手
なにもかもがいとおしかった
故郷の村は無事に魔女の手から逃れただろうか
彼の犠牲で救われたのだろうか
もう、知る由もないけれど
竜になってからは山にこもった
誰も傷つけないように
誰にも見つけてもらえないように
でも好奇心というのは恐ろしくて、
彼らは竜を追い払った
この世界に居場所はないと知って
ただただ悲しかった
自分なんて生まれてこなければよかった
そう言う度に心が締め付けられるのはどうして?
僕は望んで竜になったのに
地球を離れて
宇宙をさまよった
宇宙はただただ広くて
自分なんてちっぽけだと
はじめて思えたから楽になれた
火星を超えて
木星を超えて
土星を超えて
地球から遠ざかるたびに心が楽になった
自分を縛り付けるものはないと、そう思えた
たどり着いたのは何万光年も離れた未開の星
人一人いなくて、自然が豊かな、原初の星
そこでただひとり孤独を貪り食った
孤独の味は、苦くて、しょっぱくて、辛くて、少しだけ甘かった
あれから何千年たったのだろう
もう数えていない
一筋の光が、星に舞い降りた
ロケットから降りてきたのは
一人の女の子だった
「あなたに贈り物があります」
彼女はそう言って一通の手紙を渡した
それは、懐かしいあの人の筆跡だった
あなたが消えてから何十年
ただただあなたが孤独でないことを祈りました
本当はわたしが竜になるべきでした
あなたには荷が重すぎた
それでも、わたしはわたしの罪を、あなたの貢献を後世に伝えると決めたのです
わたしは村長になり、やがて一国の主になりました
いま、あの村は大陸全土を覆う一大帝国となりました
それはすべて、あなたを救うために、あなたの勇気をたたえるために、わたしができたすべてです
あなたを、いつまでも、あの世に行っても、どこへ行っても、愛しています
彼はその子に尋ねた
君は誰なんだい?
「わたしは初代国王の末裔
あなたを地球へ送りにまいりました
いま、地球であなたのことを知らない人はいません。
すべての国民があなたに敬意を表しています。
さぁ、帰りましょう。
私たちの星へ」
その子の手を引かれて彼はまた旅に出る
自分のねぐらに、戻る旅を