ヒゲダンの新曲「ミックスナッツ」が物議をかもしています。
そのエネルギッシュで爆発するような音像と、ジェットコースターのように疾走する展開。
彼らは今、音楽シーンのどこにいて、どこへ向っているのか?
現在のJ-POPシーンと合わせて考察していきたいと思います。
米津玄師「POP SONG」との類似点
はい、まずはこの話をしなければなりませんね(笑)
まず、この曲は2月にリリースされた米津玄師の「POP SONG」とよく似ています。
僕の母親が言っていたんですが、「区別がつかない!」(笑)
まあ、でも、これよく言われることですよね。
前にも米津玄師とKing Gnuとヒゲダンの区別がつかない、みたいなブログ記事を見たことがありますし、
YOASOBI、ずとまよ、ヨルシカの区別がつかない!という話題は「夜系バンド」としてテレビでも取り扱われてましたよね。
結論から言うと、「POP SONG」と「ミックスナッツ」は同じ”ディキシーランドジャズ”という100年前の音楽が元ネタになっています。
これがディキシーランドジャズです。
現在でも残っている曲としては主にディズニー系の曲があります。
ウォルト・ディズニーがミッキーマウスの映画を作ってたのって1920年代なので、その時代の音楽なんですよね。
あまりにも古すぎて、今でも演奏される曲としてはディズニー系の曲しかないです。
詳しい考察は下の「POP SONG」解説記事で書いています。
で、ですよ。
このタイミングですよ。
図ったのか、図ってないのか微妙なラインではあるんですよね。
でも、「ミックスナッツ」って「SPY×FAMILY」の主題歌なので、もろもろの納期を考えると、「POP SONG」と同時期に作曲されたものと思われます。
また、僕がディキシーランドジャズという単語を知ることになったのは、King Gnuの常田さんのインタビューだったんですね。
去年の10月に発表された「BOY」という曲は、ディキシーランドジャズをモチーフにしている、という話をされていたんです。
そこで初めて、ああ、あのジャンルはディキシーランドジャズというのか、と知ったわけです。
つまり、J-POP最前線に立つ3組、King Gnu、ヒゲダン、米津玄師、全員が次に来るのはディキシーランドジャズだ!って言ったわけですね。
じゃあ、なぜ、今、このディキシーランドジャズが来ているのでしょうか?
J-POPのガラパゴス化と避けられないスキップ問題
今、とりあえず日本語で歌ってればJ-POPでしょ、みたいな非常に乱雑なくくり方をされています。
もっと細分化すれば、そこにはヒップホップ、ロック、パンク、ジャズ、ファンク、R&B…と、きちんとジャンル分けできるんです。
だけど、ストリーミングサービス側でプレイリストを作る際に、どうしてもJ-POPの判断基準は「日本語で歌われているかどうか」になってきます。
と、いうわけで、今のストリーミングのJ-POPプレイリストってカオスなんですね(笑)
ラップの後にロックのシャウトが来るみたいな。
で、これはもう世間一般の認識とも一致していると思っています。
ちゃんみなもJ-POPだし、マカロニえんぴつもJ-POPだし、ずとまよもJ-POP。
いや、ちゃんみなはヒップホップで、マカロニえんぴつはJ-ROCKで、ずとまよはファンクだろ、って音楽がわかる人からしたら思うんですけど。
そんなわけで、J-POPはなんでもありなんです。
特に、ヒゲダンは前回のアルバム「Editorial」でものすごく実験的なアルバムを完成させているので、なんでもやったれ!みたいな感じなんでしょうね。
これが、J-POPのガラパゴス化です。
そして、もう一つ。
現在のストリーミングサービスで1億再生を突破するには、とにかくチャートに居続けることと、プレイリストに入り続けること、この2つが必要です。
特に一度、プレイリストに入れられるとなんどもプレイリストは再生されますから継続的に再生が伸びます。
これはストリーミングサービスが提供するプレイリストでも、個人が作ったマイプレイリストでも同じです。
今、音楽ビジネスは、いかにプレイリストに入れてもらえるか?
もっと言えばスキップされずに最後まで再生されるか?が勝負です。
ストリーミングは簡単にスキップされます。
ボタン一つですから。
だから、飽きさせないつくりの曲を作らなければならない。
その飽きの来ない展開というものが、ディキシーランドジャズだった、と僕は考えています。
「ミックスナッツ」の暴れまわるベースとブラスとピアノ、この混然としたカオスが軍隊のように襲い掛かってくる、音の暴力・洪水。
これはすでにディキシーランドジャズで確立されていたものです。
それが、現在の音楽ビジネスの形と絶妙にマッチし、トレンドの一つになっているのではないか?と僕は分析します。
音数が多いとそれだけで差別化ができますし、曲を聴いてもらいやすくなります。
今後もディキシーランドジャズを核とした新たなJ-POPというものは生み出され続け、新たな潮流となるでしょう。
まさに、新時代のJ-POPが今、生み出されようとしています。