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私的2020年アルバムトップ10 3位 King Gnu「CEREMONY」

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さぁ、ついにトップ3の発表です!

3位はもはや日本を代表し、ロックシーンをリードし、更新し続けるロックバンドKing Gnuの3rdアルバムです!

King Gnuはロックという概念にとらわれない。1stアルバムからベーシストがシンセベースを弾くという異端なことをやったかと思えば2ndアルバムの翌月にはJ-POPの名曲でもある「白日」を送り出し、一躍トップスターへの階段を上った。

このアルバムはその「白日」が収録されているわけだが、決して「白日の入ったアルバム」という仕上がりにはなっていない。

一曲一曲に新たな挑戦を練りこみ、それでいてロックとしてのカッコよさ、ストレートさがあるから異端ではなく、スピリットがロックだからどんな楽器を弾いても、どんな異端なアレンジにしても、どんなことをやってもKing Gnuはロックになってしまう。むしろKing Gnuの創る曲こそが現代の日本のロック最前線なのだ、ということができるだろう。

このアルバムは全12曲、しかし37分で終わるが、この長さがちょうどよく、聴きやすい。この辺の策略もうまいのだ。現代の日本人に一時間のフルアルバムを通しで聴くのはつらい。だいたいみんなシャッフルで聴いてしまう。しかし、40分以内であればハードルが下がる。実に聴きやすいアルバムだし、もともとレコードはたいてい40分以内が原則だった。僕はこのくらいの長さがリスナーの集中力の限界だと思っていて、これ以上長いと飽きてきてスマホをいじってしまう。

このアルバムで一番好きなのは最後の「壇上」。常田のピアノ弾き語り曲なのだが、歌詞が素晴らしい。

かないやしない

願いばかり積もっていく

大人になったんだな

ピアノの音でさえ胸にしみるぜ

君はすっかり変わってしまったけど

俺はまだここにずっといるんだ

汚れた部屋だけを残して

提供元: LyricFind

この曲は常田がKing Gnuが解散したときのことを考えて書いたという。なぜ、この人気絶頂の時にそんなことを考えたのか。

King Gnuは最初は知る人ぞ知るバンドで、マスに向けて歌うバンドではなかった。しかし、「Sympa」からその意識は変わっていき、より多くの人に認めてもらおうと曲調が変わっていく。そして、「白日」はどうすれば日本人の耳に残るメロディが作れるか研究しつくして作られた。非常に理知的で理論的に作られている。なにせ、芸大卒のバンドなのだから。

そこからスターダムに駆けあがるさまはみなが見てきたと思うが、そこでの葛藤はとても大きなプレッシャーであったろう。「白日」で一気にテレビ出演が増え、自分のエゴや個性や人格がマスに浸透していく感覚。それは本人にとってとてもつらい経験だったのではないか。だから、一回、「もしKing Gnuが終ったら」ということを考えた。でも、この曲の結論は、「どんな未来が待っていても、僕のそばにいてほしい」というものだった。それはバンドメンバーへの信頼であり、絆だ。井口はそれを聞いて涙したという。そうだろう、そこまで思ってくれるバンドメンバーはそうはいない。

King Gnuのすごいところは、それぞれに主張が強いのに4人が集まると個性がぶつかり合いながらも不思議と調和が生まれ、混沌とした感じにならない。僕は断言するがむこう10年は解散しない。20年もいけるかもしれない。今はそれぞれに様々な活動をしているが、主軸はKing Gnuで安定しているし、この間、公開された「三文小説」「千両役者」は音楽の概念を吹き飛ばすようなエネルギーに満ちた曲だ。King Gnuとヒゲダンによって日本のバンド界は一変した。それはフランス革命のように大胆で、衝撃を国民にもたらした。

日本の音楽界はいま、最高潮にあり、そしてそれを常に更新し続けている。一週間おきに素晴らしい楽曲が量産され続ける。この日本をリアルタイムで体感できることを、本当に誇りに思う。