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私的2020年アルバムトップ10 5位 ずっと真夜中でいいのに。「朗らかな皮膚とて不服」

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去年のトップ10から連続でランクイン、かつ、EPでのラインクインはずとまよだけ。

もう説明の必要はないでしょう。めざましなどでも取り上げられた「夜好性」というキーワード。これは「YOASOBI」「ヨルシカ」「ずっと真夜中でいいのに。」の三つのユニットに共通する「夜」が好きなリスナーということで広まったハッシュタグだ。この3ユニットに共通するのは主戦場がネット、そしてボカロPが活躍していること。YOASOBIのコンポーザーAyaseはボカロP、ヨルシカのコンポーザーn-bunaもボカロP、ずとまよは編曲を主に100回嘔吐、煮る果実などのボカロPが担当している。

ずとまよの楽曲は変幻自在だ。常にミクスチャーという概念が前提にあり、ありとあらゆるジャンルをごちゃまぜにして新しいジャンルを創出してしまうというとてつもない才能を発揮している。

そして、このEPのテーマは楽曲「MILABO」によく現れているように、ファンンク・ディスコ。これは昨日のDua Lipaでも触れたが、今のトレンドは70~80年代ディスコ・ファンクミュージックなのである。それに果敢にも挑戦し、それでも自分の個性を残し、さらにアップデートされた世界観を見せてくれるずとまよにはいつも驚かされるのだ。

歌詞にも注目したい。ACAねが書く歌詞はわかりそうでまったくわからない。ただ単語を並べているように聞こえるのだが、聴いているうちに情景や状況や匂いが伝わって、気づけばその世界観に埋没している。

また、フルアニメーションによるMVも素晴らしく、作画もそうなのだが、そのストーリーの深さには脱帽してしまう。明白なストーリーではなく少しあいまいなことで、リスナーは想像でそれを補おうとし、ネットでは考察論争が起きる。おそらくACAねはそこまで想定して歌詞を書いている。

しかし、ACAねの歌詞は意味不明なのではなく、むしろACAねの実体験を再現するような感覚があり、そのときのACAねの感情がリアルに自分の心の中に立ち現れる。そのとき、僕たちは楽曲を通してたしかにACAねとコミュニケートしていて、共感し、言葉を投げかける。ずとまよの楽曲はACAねという人格を憑依するための触媒になっているのであって、聴いているときはもうACAねの脳内を覗いているようで、自分の感想とかは消えてしまって、ただ、”体感する”音楽なのだ。まるで感情・人格型VRのように。

つまり、何が言いたいかというと、ACAねの歌詞は意味不明だが、それは実体験から書かれたものであり、徹底したリアリズムに基づいているということだ。

僕らがずとまよを聴くとき、僕らの心の中にACAねがいる。そのACAねに会いに、僕らはずとまよを聴くのだ。