7位はヨルシカ!
文学作品をテーマに据えたコンセプトアルバム
ヨルシカといえば毎回、コンセプトを立てて物語調のアルバムを作ることで有名。
今回は文学作品をテーマに据え、その作品の物語に沿った曲を作っています。
全体を通してなにか物語があるわけではなく、どちらかというとシングルを集めたベスト盤的立ち位置となっていますが、珠玉の10曲がここに集っています。
前作まではロック調の曲も多かったのですが、今回はどちらかというとアコースティックより、アコギやピアノがフューチャーされています。
それによって、より純度の高いポップスアルバムに仕上がっています。
「ブレーメン」ではジャズっぽいスウィングビートによる曲となっており、n-bunaさんの作曲センスが光ります。
「アルジャーノン」は壮大なバラード曲で、名作「アルジャーノンに花束を」の主人公が知性を失っていく中で本当の価値とはなにか、と問いかける深みのある楽曲に仕上がっています。
「月に吠える」では、萩原朔太郎の同名詩集にインスパイアされた作品で、世間から疎外感を覚える青年の心を叫ぶように歌う楽曲となっています。
ボーカルのsuisさんの歌唱力もさらに向上しています。
それが光るのが「都落ち」。これは万葉集からの一句からインスパイアされた楽曲です。
中盤の詩吟のような歌いまわしが新鮮な響きをもたらしています。
ポップスでありながらどこか和のテイストを感じる、そのバランス感覚に脱帽の一曲です。
音楽画集を出したことの意味
今回のアルバム「幻燈」はなんとCDリリースはなく、DLと音楽画集の2形態の販売となりました。
音楽画集とは、画集の隅にQRコードが付いておりそこから楽曲が聴けるようになっているのです。
ヨルシカがなぜ、音楽画集を出したのかについてはこの記事で解説していますので、ぜひ読んでください。
これまでもヨルシカは日記帳や手紙などフィジカルのリリースにこだわっていました。
それが今回の音楽画集に繋がったわけですが、なんと今回はCDリリースはなし。
これに関しては「創作」で実験的な試みがなされて行って、実はパッケージのみでCDが入っていないものがリリースされていたんです。
音源はサブスクで聞いてね、と。
今回もそれと同じようなことが言えます。
みんなサブスクで、もしくはDLで聞くわけだからCDは存在する意義がもはやない。
それはヨルシカが常にポップスの第一線で活躍し、時代の波を読んできたからこそ選べた選択肢だったと思います。
常に疑問を投げかけるのがヨルシカ。
エイミーの手紙箱とエルマの日記帳はそのカウンターであったわけですが、今回はそれが音楽画集というアイディアに繋がりました。
今回のアルバムもシングル配信曲が多く、サブスク時代に相応しいアルバムとなりました。
それでも全体を聞いたときになにか感じるものがるのがヨルシカのこだわりだと思います。
繋がっていない物語が繋がっているように聞こえる。
やはりヨルシカと物語は切っては切り離せないようです。