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オリジナル小説-「その傷の重さは①」

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当ブログの在り方について悩んでいます。当初、このブログは自分のうちに抱えている想いを吐き出すための装置として使っていました。しかし、そのうちにアクセス数を気にするようになって、このネタはやめたほうがいいなとか、本当に自分の書きたいことが書けていないのではないかと思うことが増えました。

先日、このブログはGoogle Adsenseの審査を通過し、収益化への道が開けました。そうしたかった理由は、小説賞に応募して落選した作品が多数あり、それを掲載したいのだけれど収益が見込めない無料サイトにあげるのは気が引けたからです。それだけ思い入れの深いものなので。

ですので、今日から過去の作品になりますが、小説の連載を始めようと思います。あくまで試験的なものでまた運営方針が変わるかもしれませんが、見守っていただけると幸いです。

 

今日掲載するのは、ずいぶん前、履歴によれば2015年に執筆した短編になります。

かまいたちになってしまったとある少女の話。

それでは、どうぞ。

その傷の重さは

                tokiha
 
 わたしがこうして手記を残そうと思ったのは、終わりは唐突に、予兆もなくやってくることをこの短い人生の中で幾度も思い知らされたからです。悲しみも、苦しみも、そして幸福も、すべて始まりがある以上は終わりがあるのです。この命もいつ終わるともしれないことにわたしは気づいてしまいました。だから、せめて。わたしが生きた人生になにかの価値があるなら、誰かに伝えようと思ったのです。これは、途方もない自分語り。それでも、これを読んだあなたが何かを感じ取ってくれるなら。わたしは語りましょう。一人ぼっちで、傷だらけの化け物の物語を。
 
 わたしは両親を知りません。赤ん坊のときに捨てられていたのをお寺の住職さんがひきとってくれたのだそうです。名前は住職さんがつけてくれました。綺麗な夕焼けの日に拾われたから、「あかね」。自分で言うのもなんですが、悪くない名前だと思います。
 わたしはそのお寺で育てられました。そのお寺は寺子屋もやっていましたから、同い年の子供と一緒に学び、よく遊びました。ときどき、村の畑を手伝ったりして、お小遣いをもらって大喜びしたりしました。村の人たちは優しくて、わたしをかわいがってくれました。そんな村の人がわたしは大好きでした。
 ある日、寺子屋の男の子と喧嘩をしました。きっかけは些細なことでしたが、男の子はわたしが捨て子であることを馬鹿にしました。彼は少しからかうつもりで、軽い気持ちで言っただけだったのだと思います。しかし、わたしはそれで頭に血が上ってしまいました。許せない。憎い。そう思った瞬間、彼の腕に一筋の引っかき傷ができました。それは本当に突然現れました。しかし、それほど大きな傷ではありませんでしたし、彼もどこかでひっかけてしまったのだろうと気には留めませんでした。傷のことで喧嘩はうやむやになって、とりあえずは仲直りをしました。
 しかし、またある日、他の男の子と喧嘩になった時、同じように彼の腕にひっかき傷が浮かび上がりました。
 それは何度か続きました。
 やがてみんなは気味悪がってわたしを避けるようになりました。そして、ついたあだ名は、「かまいたち」。わたしはお寺で一人ぼっちになりました。
 住職さんはわたしに聞きました。「あかねがみんなを傷つけたのかい?」わたしは違う、と言いました。わたしは何もしてない、勝手に傷がついただけ。しかし、住職さんは信じてくれませんでした。「きちんとみんなに謝りなさい」そう言われました。わたしは裏切られた気持ちになりました。住職さんは信じていてくれると思ったのに。とても傷つきました。住職さんの語調は次第にきつくなり、無理やりわたしに謝らせようとしました。わたしは怒りがこみあげてきて、住職さんのことを恨みました。すると、その瞬間、住職さんの腕にいくつもの引っかき傷ができました。住職さんは悲鳴をあげて、この子はかまいたちだ、呪われた子だ、と叫びました。違う、わたしはかまいたちなんかじゃない、そう言いましたが、住職さんはとても怖い顔で出て行け、とわたしを追い出しました。
 わたしは行くあてもなく、村をさまよい歩きました。もう、わたしの話は伝わっているようで、どの人もわたしと目も合わせようとしません。級友たちはわたしに石を投げました。その中には親友だった女の子もいました。どうして、わたしだけがこんな目に合わなければならないのか。理不尽だ。わたしは何もしていない。
 唐突に憎しみがこみ上げてきました。今までの優しさはなんだったのか。また、こんな風にしてわたしは捨てられてしまうのか。捨て子に価値はないのか。あたたかかった心はとうに冷め切って、すべて憎しみに変わっていました。
 ああ。世界がわたしを拒絶するなら、全部壊れてしまえばいい。
 そう思った瞬間。
 わたしの願いに応えるように、村を吹き飛ばすような豪風が吹き荒れました。そして、悲鳴があがりました。村の人たちの体にいくつもの引っかき傷が浮かび上がっていたのです。それほど、傷は深くないでしょう。それでも、そのとき、わたしの生き方は決まってしまったのです。
 わたしは、かまいたち。
 人を憎しみで傷つける存在。
 それが、わたし。
 悲鳴の中、わたしは微笑んでいました。これから、わたしは人を、世界を憎しみながら生きていく。それが生きる理由になるなら。
それでもいいや。
 わたしはその村を離れ、行くあてもなく村々を転々としました。食べ物なんてありませんでしたから、かまいたちの力を使って荷馬車を襲って奪いました。最初は罪の意識に苛まれることもありましたが、そのうちに慣れていきました。人を傷つけたときは、言いようのない優越感に浸れました。自分は特別なのだと。みんなから憎まれる代わりに、自分には強い力がある。この力さえあれば、なんでもできると思っていました。人を殺すことも。
 やがて、かまいたちが出るという噂は広まり、討伐隊が組織されました。しかし、侍たちに囲まれてもわたしは怯みませんでした。その程度、なにも怖くない。侍たちに傷を負わせ、わたしは逃げました。襲われる度に傷つけて、傷つけて、傷つけて、やがて討伐隊は恐れをなしたのか、襲われることはなくなりました。

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