栄えある第1位は!
ヒゲダンの最新作「Editorial」です!
「Editorial」がどんなアルバムか、そして、「Cry Baby」のジェットコースター転調はどのように生まれたのか、こちらの記事で書いていますので読んでもらえるとうれしいです!
ここでは、「Editorial」リリース後、彼らが根本から変えてしまったJ-POPの現在についてお話ししたいと思います。
トレンドという概念は崩壊した
音楽には当然、流行り廃りが存在します。
例えば、今、ELLEGARDENみたいなメロコアをやっても売れないと思いますし、そういう感覚はみなさん理解いただけると思います。
そういう時代じゃないよねっていう。
でも、最近のストリーミングのチャートを見ていると、どうやらそうでもないぞ、ということが言えると思います。
今のチャートではあいみょんや優里のような王道J-POP、YOASOBIのようなZ世代カルチャー、Vaundyのようなチルポップ、WANIMAのようなパンクロック、と実にさまざまなジャンルの音楽がごった煮になっています。
これは、音楽ストリーミングが広まり、みなが流行にとらわれず、自分の好きな音楽を好きなように聞くようになったからだと言えます。
しかし、ストリーミングが一般化したのは2019年。この年、多くのストリーミングで配信されていなかったビッグアーティストがストリーミングを解禁し、一気に加入者が増えました。
ですが、すぐにはこのようなジャンルフリーの状態にはならなかったのです。
2020年はもはやYOASOBIの年と言って過言ではないでしょう。そして、瑛人や神はサイコロを振らないなどのTikTok発のアーティストが注目され、SNSが密接に音楽に絡んできた年でした。
2020年の音楽シーンを振り返ると、注目を集めているアーティストがさらに注目を集め、爆発的にヒットを生む、という構造になっていました。
そして、これはストリーミングやビルボードチャートの功罪であり、アルゴリズム上どうしてもそうなってしまうのです。
ですから、2020年までは音楽トレンド、具体的に言うと、SNSからバズを狙うという戦略が存在したわけです。そして、イントロがなく、かつTikTokで使いやすいようなアコースティック、抑え目のエレクトリックサウンドが圧倒的に多かったわけです。
そのトレンド傾向というものをヒゲダンは「Editorial」でぶち壊しました。
「Editorial」というアルバムは自由なジャンルの曲が一緒くたに並べられています。
「アポトーシス」「I LOVE…」はFuture Bass、「Cry Baby」はヘビーロック、「Laughter」はオアシスのようなスタジアムロック、「Universe」は王道J-POPと、本当にジャンルで見るとてんでバラバラ。
だけど、このアルバムがちゃんと一つの作品としてまとまって聴けるのは、すべてがとにかく新しいサウンドで塗りつぶされているからです。
すべて未来的なサウンドで構築されているという点はどの曲も変わりません。
そして、何よりも伝わってくるのは彼らがこのアルバムをとても楽しんで作ったのだろう、ということ。
このアルバムはとにかく自由です。
もはや、バンドサウンドも捨て去って、身軽にジャンルを飛び越え、飛翔していく。
そして、このアルバムこそがトレンドという、ミュージシャンを縛り付ける枷を砕ききったのです。
それは、このアルバムの売り上げが証明しています。
ビルボードジャパン、オリコンを3週連続で一位を獲得するという快挙。
このとき、彼らは僕たちに証明してくれたのです。
音楽は自由であるべきだ。
そして、自分が最も愛せる音楽を作れた時、きちんと世間は正しい評価をくれる、と。
SEKAI NO OWARIやサカナクションは2010年ごろにデビューして今まで、きわめて戦略的に音楽を作り、チャートを席巻していきました。
セカオワは自らのネガティブな部分をさらけ出すのではなく、ファンタジーという布にくるんで物語として魅了させました。
サカナクションは、ロックとダンスミュージックの融合、そして、ダンスミュージックと歌謡曲の融合、と異なる2つのジャンルを掛け合わせることでバズを作り出しています。MV制作に徹底的にこだわり、アートまで昇華させたのもサカナクションが最初だと思います。
しかし、もはや、そんな戦略は要らない時代になったんだと。
自由に、好きなように作れば、それを同じように好き!と言ってくれるリスナーがいる。
アーティストとリスナーの距離が近いのです。
それをインターネットが現実化させてくれた。
ものすごく時間はかかりましたが、アーティストとリスナーの物理的距離をやっとゼロにすることができたのです。
そして、これからは、よりコミュニティ的な音楽シーンになっていくでしょう。
マスに訴求するのではなく、少数の、でもきちんと自分の音楽に耳を傾けてくれるファンとゼロ距離で対話する。
大きな売り上げなんて必要ないんです!
クラウドファンディングを使えば、資金がなくてもアルバムは作れます。
メジャーもインディーも関係なく、売れるか売れないかに関わらず、やりたい音楽をやればいい。
そのことをただただクオリティと売り上げという数字で示したのが、この「Editorial」という革命の真意です。