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私的2020年アルバムトップ10 10位 LiSA 「LEO-NiNE」

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アーティストが飛躍的に成長する瞬間が必ずある。それをいま、わたしたちはLiSAというアーティストの成長を介してリアルタイムで体感しているのだと思う。

もう語るまでもないが、名曲「紅蓮華」。小学生でも知っている国民的ヒットソングになった。実は紅蓮華はすべりだしはあまりよくなかった。鬼滅も最初はそうだった。しかし、時間がたつにつれ、徐々に国民全体、年齢・性別・国境を越えて伝播し、ここまでに至った経緯がある。

実はあまり知られていないが、「紅蓮華」は彼女の挫折を歌った曲である。彼女はライブを見たことがある人はわかるだろうが、常に飛び跳ねる元気っ子がトレードマークの底抜けに明るい人だった。しかし、これはのちのインタビューで「全力投球しなければ見捨てられる気がして、実はずっと怖かった」と語っている。彼女にとってのそれはペルソナで、実は引っ込み思案な部分があったのだ。しかし、その全力投球のパフォーマンスが評価される中で30代に入り、配力の衰えから、全力のパフォーマンスができなくなっていった。そして、LiSAは自身の体調不良を理由に一度ライブをキャンセルしたことがある。これが彼女にとっての挫折である。もう、あの元気っこは演じられない。じゃあ、ほかの人は私をどう見るのだろう。あのパフォーマンスなしでわたしは歌手として生き残れるのだろうか。そういう言葉を赤裸々に語っている。一度は歌手を辞めることも検討したそうだ。しかし、やはり、自分には歌しかない、と決意し、蜂起の一曲となったのが「紅蓮華」。そう、これは”挫折した人へのレクイエム”であり、”立ち上がるための革命”であった。だから、この曲の歌詞はリアルに私たちの心に突き刺さってくる。

そこからの快進撃は素晴らしいものだった。どバラードの「unlasting」(LiSA曲でバラードは今まで「シルシ」しかなかった)では、チルなサウンドからのサビの広がり方、歌唱の変化、表現力の躍進。「愛錠」では初のドラマ主題歌を手掛け、アニソン歌手ではなく、一人のポップシンガーとしてJ-Popに果敢にも挑んでいる。

僕のお気に入りは「cancellation」。これは歌詞の通り、LiSAのアンチに対するメッセージである。LiSAと言えば、「今日もいい日だっ」のツイートを毎日していることで有名だが、こういうキャラが気に入らない人もいるのだろう。批判のリプが飛んでくるのは日常茶飯事だったそうだ。ライブでの元気っ子な感じも気に食わない人はいた。しかし、彼女にとってのそのペルソナは自分を維持するためのものであり、アーティスト「LiSA」としてのアイデンティティとなりうるものだった。挫折を経験した以降は動き回るのではなく、歌唱に全力を注ぐ、ダンスチームをいれるなどして、「LiSA」としての魅力は損なわず、かつ、自分の今の状態でできる方法へと変化していった。アコースティックライブなど今までにない挑戦があったのもそのためだ。それは、もう、彼女にとっての「生き方」なのだ。それを否定する奴らの言葉に耳は貸さない。聞く価値もない。私は私の道を信じて進む。その決意がこの音像と歌唱によく表れている。

つい昨日、LiSAの無観客ライブを見た。ステージセットの使い方やダンスパートがあったり、ダンサーもフルに使って、自分は歌に集中する。そのストイックな姿勢とアテチュードの変化を感じる革新的なライブだった。

もう、LiSAはアニソン歌手ではない。そんなこと、僕が許さない。

LiSAは自分の挫折を通して”アーティスト”になった。

これからどういう歌を歌っていくのか。アニソン? ドラマ主題歌?

いやいや、そんなこと関係ないんだよ。

ただ、LiSAというロックシンガーが日本にいるということが誇りなんだから。