
前のお話↓ その夜もまた同じ夢を見た。僕はまたあの見知らぬ家の廊下にいて、夢の歌声が聞こえてくる。右手奥のリビングの扉を開ける。「ユキさん! 今日も来てくれたんだね!」 夢は満面の笑みで迎えてくれた。昨日の夜は一抹の寂しさを抱えて目覚めただけに、夢が笑って迎えてくれたことが何より嬉しかった。「待っ […]
[連載小説]夜伽の夢 第二章 友達

前のお話↓ 夢は筆談だと厄介だからという理由でLINEを交換しようといい、以後は僕が口頭で話し、夢がLINEで返すようにした。「これまでも夢と現実がリンクするようなことってあった?」”ううん。ユキさんが初めて”「僕の夢では君はどこか知らない家のリビングで唄を口ずさんでいた。それは君の記憶と一致する […]
[短編小説]音のない世界で

第一章 音楽 「その昔、人類には音楽という文化があったそうです」 彼女は書物をひざに乗せながら小さくつぶやいた。「オンガク?」 僕はその単語を知らなかった。不思議な響きのする言葉だと思った。「ええ。いろんな音の集積で成り立つもので、それでいて心を打つものを特別にそう呼んだとこの書物には定義されていま […]
[連載小説]夜伽の夢 第一章 邂逅

唄が聞こえる。その唄はどこか懐かしい響きがする。 唄は誰かの鼻歌で紡がれている。透き通るような、天まで昇らんとする声。目を開ける。そこは自分の知らない場所だった。どこにでもあるような木造の家の廊下。知らない他人の家の匂い。だけど、どこか懐かしさを感じている自分がいる。僕はここに来たことがあるのかもし […]
[小説]Black Lives Matter-エピローグ
2120年5月25日、世界最大の量子コンピューターA.I.Dが機能停止。これにより、アドミゼブルという国家は崩壊した。国境付近のゲートが破壊され、そこからグリートの治安維持軍が潜入。アドミゼブルの国民はグリートに非難した。 5月30日、グリートはアドミゼブルの併合を発表。AIによる統治国家は終わりを […]
[小説]Black Lives Matter-第八章
2120年5月25日午後7時55分「準備はいいか?」 トキハは一通り準備を終えたらしく、数十個はあるディスプレイから目を離し、俺たちを振り返った。俺は左手側、キーボードのイリス、トランペットのアーノンに目線を送る。みな、神妙な表情でうなずく。俺の真裏のドラムのクルト。にやっと笑って返す。右手側のカロ […]
[小説]Black Lives Matter-第七章
トキハの案内で本当にA.I.Dに感知されずにオーソサエティータワーの外に出ることができた。外はもう暗くなっていて、久しぶりに浴びる夜風が心地いい。「レオ、お前に会わせたいやつらがいる」 そう言って、トキハは裏路地をかいくぐり、古びた工場跡のような建物に案内した。 そこには、Black Lives […]
[小説]Black Lives Matter-第六章
真っ白な天井を見つめていた。ただ何の意味もなく光り続ける蛍光灯を見つめていた。 ここはオーソサエティタワー内部の拘置所。 あのデモからもう三日が経つ。 あのとき、グレイはデモの首謀者は自分だと必死に主張した。だが、署名活動の責任者の名義が俺、Black Lives Matterリーダーであるレオで […]
[小説]Black Lives Matter-第五章
三か月後、百万名の署名が集まった。その知らせが来たのは、ライブ中だった。そのことを報告すると会場から歓喜の声が湧きあがった。「これで俺たちは自由だ!」「やっとA.I.Dに報復できるぞ!」「今こそ民主主義を取り戻す時だ!」 ”Black Live Matter! Black Lives Matter […]
[小説]Black Lives Matter-第四章
僕らの三か月間のスケジュールはその後、一週間の間にすべて埋まった。 観客が端末で撮影し、ネットにアップした動画はすべてA.I.Dの検閲対象になり、すぐに削除されたが、口コミで僕らの噂は広まり、瞬く間に人気者になった。 ネット記事には「葬られたブラックミュージックを再生するレジスタンス、Black […]