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はじめてのクラシック①ベートヴェン交響曲第6番「田園」

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クラシックを聴いてみたいけれどどれから聴いたらいいかわからない、というかたは多いはず。今回はそういう方のために初心者がどんな曲を聴いたらいいかアドバイスしていきます。

 

まず、選曲の条件がこちら。

①聴きやすい長さ(30分から40分)であること

②誰でも知っている曲ではなく、ちょっと通ぶれる曲であること

③わかりやすい曲であること

僕の中では②が一番大事で、例えばもうベートーヴェンの運命なんて聞きなれてしまっていると思うし、聴いたところで人に自慢できるとは思えません。クラシックは最初は「人とはちょっと違う優雅な音楽を聴いている」という優越感を持って聴いてもいいのです。最初は興味本位でもだんだんその深みがわかってきます。だから、ちょっと通ぶれる、という基準を入れました。

この基準を満たす曲を三曲、三日にわたって紹介していきたいと思います。

 

今日はベートーヴェンの交響曲の中から第六番、田園です。正直、ベートーヴェンだったらどの交響曲でもいいのですが、第六を選んだ理由は、第五運命がみんなあきれるほど聴いてて新鮮味がないし、第九は長すぎる、という理由です。あと意外と第六を好きな曲に挙げる人が少ないというのもあります。

 

この曲は副題にもあるとおり、ウィーンの田園風景をイメージしてつくられたと言われています。第一楽章から優雅な主題が流れ、テンポもゆったり、安らかな気持ちで音楽に身を預けることができます。

 

そして、この第六が画期的な点は和声にあります。ベートヴェンは第五・運命にて「ダダダダーン」という単一のモチーフのみですべての楽章を構成するという画期的で人類知の極限を目指しました。そこで理性的に曲を作ったことで、この第六ではより官能的で、感情的な曲を目指しました。この「官能的」というテーマがベートーヴェン時代の古典派にはなかった特徴で、この後のロマン派のテーゼが「官能的」であることなのです。つまり、この第六からベートーヴェンはロマン派に一歩身を預けることになるのです。実際、このころからベートーヴェンの和声はロマン派に近づいていきます。それは一聴してもわかると思います。例えば、初期の名曲、第三・英雄はかなり古典的で、まだモーツァルトの香りがします。しかし、第五・第六からベートーヴェンは真にベートーヴェン的な旋律と和声を身に着けていくのです。

 

しかし、ベートーヴェンの第六、と言っても数々の名演があります。どれを選べばいいの?という方のために、おすすめの指揮者を教えておきます。

 

まず、人類が誇る名指揮者と言っても過言ではない、フルトヴェングラー。彼は1953年に亡くなっていますので、録音はかなり古いです。場合によってはモノラルになると思います。しかし、それを差し置いても彼の表現力はすさまじい。なぜ、彼がこんなにすごいのかというと、少年期にロマン派後期の空気感を肌で感じているからです。実際にクラシックの生まれる時代を生で体感した世代は圧倒的に表現力が違うのです。彼の演奏を聴いていると、実際に19世紀のウィーンにいるようなそんな気分に浸れます。すごく古典的な演奏ですが、だからこそ希少で、彼の録音が今も残っているのは本当に奇跡としか言いようがない。ぜひ、味わっていただきたい。

 

続いて、もっと録音年が新しいもの、というのであればカール・ベームをおすすめします。彼も巨匠中の巨匠、カラヤンと並ぶ1960~1970年代のクラシック黄金期の筆頭指揮者です。カール・ベームはやはりベートーヴェンが巧みで、彼の楽譜の読解力、歴史の把握力、そしてその表現力は群を抜いています。深みのある演奏、それでいてダイナミズムを失わない古典性と現代性を併せ持つ指揮者、という印象があります。

 

ベートーヴェンだったらカラヤンを選んでもいいのですが、カラヤンは実はクラシックファンの間では嫌われています。評論を読むと、カラヤンがクラシックをハリウッド映画に貶めたとかさんざんなことが書かれています。僕はそうは思らないのですが、カラヤンは膨大な当時としてはあり得ない数の録音を残していて、その中には表現力のない、ただ譜面通りになぞるだけのものもあった、という話です。ベートーヴェンやブラームスなど演奏機会の多かったものはやはり巨匠らしい堂々たる風格、そしてカラヤンの特徴である爆音でテンポの速い指揮が味わえます。おそらく音が大きくてテンポが速いという点に不評が買われているのでしょうが、僕はそうは思いません。彼独自の表現技法なのだと思います。

 

以上、今日はベートーヴェン第六番・田園のご紹介をしました。これから三日にわたってクラシック入門のコーナーをやりますのでどうかご一読を。