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DUSTCELL「SUMMIT」トラップでありながらも歌モノにすることの革新

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DUSTCELLはボカロPである「Misumi」とボーカリスト「EMA」のユニット。DUSTCELLの特徴は地を這うような重低音とEMAさんの特徴的な浮遊感のある声・それでいてエモーショナルで感情表現豊かな歌がベースの凶悪さと比べて極めてポップに響くこと。最新のジャンルであるトラップの音を継承しながらもあくまで”歌モノ”としてポップな曲を作ろうとしているのです。間違いなく日本で最先端の音楽を探求しながらもポップなものをつくろうとしている誠意には敬服します。

DUSTCELLのここがすごい① トラップなのにちゃんと歌モノ

DUSTCELLの代表曲「STIGMA」。聴いてください、この地獄を体現したかのような絶望的なまでに体を揺さぶるベース! ディストーションギターも特徴的で、DUSTCELLの中でも非常にロックな曲と言えます。この曲は作詞をボーカルのEMAさんが行っており、その歌詞にはこれから歌手として一生歌い続けていくという覚悟が描かれています。メロディもそれに沿って不安をなぞりながらも徐々に革新へと向かっていく、そしてこの曲の白眉は最後ラスサビに行くかに思えたのに転調してDメロになってしまうことです。この展開の妙。そして、ロックでありながらもこの曲のメロディはとても覚えやすい。僕はポップミュージックの定義とは覚えやすいということだと思います。その面ではこの曲はポップな歌モノとして成立しているということができます。その中でもあふれ出る感情の激流。やはりEMAさんの歌声はすごい。

DUSTCELLのここがすごい② にじみ出る物語性

実はDUSTCELLはあのヴァーチャルシンガー「花譜」が所属する「KAMITSUBAKI RECORD」に所属しています。ですから強固な映像チームが付き、MVの物語性も実に豊かです。そこには今乗りに乗ってるYOASOBIとつながるものがあると思います。

このミステリアスなMVの破壊力と同じようにミステリアスに進行する曲。Eveさんの曲やずっと真夜中でいいのにの曲のようなわかりそうでわからない、それでいて示唆的な暗喩が随所にちりばめられていてより曲の世界観に引き込まれていくのです。

また、コンセプトで言えば、この曲が最もすごい。

「Heaven and Hell」。文字通り天国と地獄の曲なのですが、地獄から天国パートへの曲調の変化がすさまじく、本当に昇天したみたい。音が空から降ってくるような恍惚感と、すぐにやってくる、「これは天国じゃない、天国の形をした地獄なんだ」と気づいた時には地獄に落ちてる。結局、この曲の主人公は「天国の成りをした地獄」にとらわれてしまうわけですが、これはハッピーエンドなのかバッドエンドなのかわからない。そのコンセプトをきちんと音にパッケージングできるのは日本中どこを探してもMisumiさんしかいません。

DUSTCELLのここがすごい③ EMAさんの表現力

この曲はEMAさん作詞で、MisumiさんとEMAさんの出会いを描いた曲。今まで自分にはなにもなくて一歩を踏み出すことが怖かった、だけど彼と出会えて、苦痛や喜びをともに分かち合える仲間ができて、自分は今、とても幸せだ、やっと居場所を見つけられた、そんな曲です。とても感傷的でいながらもEMAさんの素直な心情が現れていて、その苦しさや切なさ、そしてかすかな喜びをとても丁寧にEMAさんの歌声が彩っていて、心を揺さぶられます。そして、一つ、驚きだったのは、EMAさんにとってMisumiさんとの関係性は対等ではないという前提であることが2Aの歌詞によく表れています。しかし、僕は思うのですが、Misumiさんはボカロでは表現できることに限界があるからこそEMAさんを呼んだのではないでしょうか。ボカロPというのは孤独な存在です。すべて自分のデスクの上で作り上げなければいけないのでひたすら孤独です。そして今はもうボカロ自体再生数が伸びない。だから、MisumiさんにとってもEMAさんとの出会いは大事なものだったのではないでしょうか。EMAさんとMisumiさんだったからこそ、ここまで攻撃的で、革新的で、なおかつポップなアルバムができたんだと思います。