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アトリオンで行われた山形交響楽団による第九演奏会に行ってきました

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2月23日、秋田のクラシック音楽ホールであるアトリオンで開かれた山形交響楽団によるベートーヴェン交響曲第9番の演奏を聞いてきた。

正直言って心が震えた。ライブでこんな感動を味わったのは初めてかもしれない。

実は当初は山形フィルに対して不安があった。仙台フィルならまだしも山形なんて地方のオーケストラにあの第9が弾けるのだろうか、と。

そんな不安は数分でもののみごとに吹き飛んだ。アトリオンは狭い音楽ホールなので、大きな人員を呼べない。そのため、木管、金管を必要最小限に抑え、その代わりに減額を大幅に増やした布陣だった。これが実によかった。アトリオンはもともとパイプオルガン用に設計されたコンサートホールであり、低音の伸びが実にいい。そしてこの編成ではコントラバスが三人とやや低域寄りの編成だったため、ストリングスの響きがより豊かに、伸びやかに、そして太く響く。そのぶん、木管が多いアダージョでは静かになってしないがちだったが、そこは指揮者の配分が見事で、音が小さくなりすぎないように気を付けていた。

指揮者も素晴らしかった。指揮は 垣内悠希という、ウィーン在住の実力派。第九は緩急や強弱の表情付けが緻密に行われなければならない。彼は抑えるところは抑えて、ここぞというところでテンポ、音量を上げる。その急な切り替えしがたまらなく音楽的で、見ていて安心感があった。

そしてなんといっても合唱団の素晴らしさ!アトリオン合唱団とアトリオン少年少女合唱団が合唱を担当したのだが、なんとその人数はざっと数えて50人ほど!ふつうはあり得ない。ベルリンフィルでも30人が限度だと思う。そしてみんな一様にうまい!第九の歓喜の歌はドイツ語だし、発音の面で気になる演奏が国内では多いのだが、ここは発音もしっかりしている。なにより、その音量と荘厳さ!重厚なストリングスとともに果てのないエクスタシーを僕らにもたらす。それはベートーヴェンが目指した音楽の理想、人の手で神の領域に至るような楽聖の精神そのものを体現したかのような見事な演奏だった。

今年はベートーヴェン生誕250周年である。そのはじまりをこの第九ではじめられたことをうれしく思うし、たぶん僕はいつまでたってもあの演奏を、歓喜を忘れないだろうと思う。間違いなく音楽の理想形がそこにあったのだ。音源では感じられない恍惚がそこにあった。秋田では交響曲を聴く機会はなかなかない。しかし、ぜひ、山形フィル、仙台フィルと東北の楽団、そしてできれば東京フィルも演奏しに来てほしい。アトリオンの音響は素晴らしいので!できれば5,6,7番あたりが今度は聴きたい。