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ディスクレビュー-宮本浩次「宮本、独歩。」

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宮本浩次はロックスターである。それはこのアルバムが明確に証明している。また、あなたがテレビで宮本のパフォーマンスを見たことがあるならすぐに納得してくれるかもしれない。あふれ出る情動を身体を引き裂かんばかりのオーバーなパフォーマンスで観客を魅了する、あるいは畏怖させることにかけては日本でピカイチだと思う。

2018年、エレファントカシマシは結成30周年を迎え、これをいったん区切りとして宮本はソロ活動に入ることを決意した。事務所もアミューズへと移籍となり、プロデュースには小林武史がつくことになった。そして、初のシングルが「冬の花」という歌謡曲だった。

なぜ、宮本が歌謡曲を歌うのか。しかし、エレカシと言えばロックのイメージが強いが、当の本人はジュリーに夢中になっていたりと割と年代そのものの流行歌が当時好きだったようで、ソロの第一作を幅の広いものにすることで意表を突くとともに既存の宮本浩次のイメージを壊すようなものにしたかったのだろう。

その後も次々とタイアップが続く。「going my way」では月桂冠のCMに、宮本の本気のラップが聞ける「解き放て、我らが新時代」はソフトバンクのCMに、「きみに会いたい -Dance with you-」は高橋一生への提供曲としてドラマ主題歌になった。

その後も攻勢は続く。夏にKEN YOKOYAMAをプロデューサーに迎え、新曲を書き下ろした。「Do you remember?」である。これは実に痛快なパンクナンバーとなっており、KEN YOKOYAMAのギターパフォーマンスもさることながらそれを受けてさらに燃え上がる宮本の絶唱がとどろくこのシングルにぶちのめされたのは僕だけじゃないはずだ。

そしてアルバム先行シングルとなった「ハレルヤ」。日々の生活を切り取ったような歌詞、それでいてロック、パンクとなっているのがおもしろい。エレカシとは違うミディアムテンポで攻める大人なロック。荒々しくはなく、しかし、そこには子供のように夢を語る50を超えた宮本の存在感がドキュメンタリーのようにつづられ、その生きざまを克明に描写している。

つまるところ、このアルバムは1年かけた宮本のソロワークスのベスト盤なのである。どこを切り取っても文句のつけようのない名盤である。そして、どの曲にも宮本の熱い魂の絶唱と卓越したソングライティングが落とし込められている。

そのうえで、これらの楽曲が実にバラエティ豊かに演奏されることだ。エレファントカシマシというバンドでは見せられなかった景色がたしかにここにある。歌謡曲、ラップ、パンク、ダンスナンバーなんでもござれ。それをどれも宮本節で自分のものにしてしまう宮本のすごさ。これで50超えてるんだから本当にレジェンドだと思う。

宮本浩次はロックスターだ。世の中には50を超えると徐々に守りに入っていって過去の焼き直しに専念する人たちもいるが、彼はいまだ輝き続ける闘志を胸に宿している。日本を代表する、どころではなく、世界に通用するロックスターなのだ。