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ディスクレビュー-香取慎吾「20200101」

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SMAP解散後はじめての香取慎吾ソロとしてのアルバムだ。まず、そのサウンドの新しさに耳を奪われる。最新のトラップから(Trapという曲がある)Future bass、トロピカルハウスをこれでもかというポップでキャッチーなメロディに乗せて歌い、思わず踊りだしたくなるようなとにかく明るく開けた、未来的なサウンドが目の前に広がる。なにより香取慎吾自身が楽しんで歌っているのが伝わってくるような、多幸感に包まれたアルバムだ。

 

ひとつ気になる歌詞があった。

「Prologue」

“昔の自分と満ち足りた過去と別れつげ

もっかい描き出すPrologue”

 

実に赤裸々に今の状況を描いた歌詞ではないだろうか。香取慎吾はまさにこの2020年1月1日からもう一度始めようとしているのだ。自らのポップシンガーとしての歴史を、最高のサウンドに乗せて。そこまでには様々な迷いがあったと思うし、実際、ジャニーズ事務所が圧力をかけて放送局から新しい地図の面々の出演自粛を強制していたことが分かった。しかし、その報道後は圧力も収まり、なんと新しい地図の3人で4月からレギュラー番組が始まるそうだ。またあの3人のスターを見れると思うとわくわくする。

 

また、今回のアルバムは客演も豪華で、新人で勢いのある須田景凪、KREVA、スチャダラパー、気志團、BiSHなど、それぞれにフューチャリングアーティストの良さを生かしたとても幸福なコラボが実現している。聴きどころはBiSHとの最後の曲、「FUTURE WORLD」で、オーケストラアレンジがなされ、BiSHの「オーケストラ」のような壮大でどこか新たな始まりを予感させるこの曲でアルバムを終えるというのが実に憎い。

 

「FUTURE WORLD」

“どんな苦悩も全部耐えながら

どんな未来が待っているかな?

自分主義見せる生き様

そうさ今から楽になるから”

 

ここまで自分をさらけ出している歌詞にまず驚かされる。しかし、この歌詞にはやはり批判にさらされた時の苦悩がにじみ出ている。それでも自分のやりたいことをやりたい、自分を貫き通したい、という意思をひしひしと感じる。そして、それが彼にとって一番楽しいことなのだ。

 

本作は香取慎吾の生きざまを赤裸々に語るとともに、ずいぶん力の抜けた、ナチュラルな香取慎吾が聴ける、貴重なアルバムだ。まず、このサウンドの自由度、そしてやはり香取自身の歌唱力に納得させられる。初のソロアルバムとしてこれほどの完成度を持つのはまれだろう。ぜひ、過去にSMAPに夢中だった人も、もちろん香取慎吾のファンにも、そして全音楽ファンに向けて全力でこれは聴かなければならないとお伝えしておく。