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はじめてのクラシック②ブラームス交響曲第一番

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ブラームスの交響曲は初心者向けです。初心者向けだけど深みにはまればはまるほど良さがわかってくるのがミソ。

まず、お勧めできる理由がブラームスの交響曲は4曲しかないこと。それと、一曲すべて40分前後であること。だからかなり聴きやすいです。ブラームスは長生きしたほうで63歳まで現役を全うしました。モーツァルトが35歳で亡くなっていることを考えると長生きしたほうなのですが、なぜ、こんなに交響曲が少ないかというと、この交響曲第一番を完成させるのに19年もかけたから。ブラームスはベートーヴェンの交響曲を意識するあまり交響曲というものを大きくとらえすぎ、結果、寡作となってしまったのです。しかし、それもさもありなん。ブラームスの世代はベートーヴェンと時代は違えど、まだ人々が第九の熱に浮かされていた時代でした。第九は多くの作曲家に影響を与え、以後、第九第四楽章「歓喜の歌」のような大仰なフィナーレが好まれるようになりました。ブラームスもその一人で、この曲のフィナーレはやはり第九に通ずる、勇壮で壮大なフィナーレが待っています。

 

聴きどころとしては、まず、第一音に圧倒されてほしい。この曲の第一音は相当練られており、誰が聴いても印象に残る、素晴らしいイントロと言えるでしょう。この一音だけでブラームスとわかる、不穏で、不協和さえもいとわず、ティンパニが草原を疾駆するように観客を煽り立てる、このイントロ。ブラームスは特にイントロにこだわる人でした。イントロで転調を繰り返し、8小節目までこの調がどこにあるのか判断させない、という画期的なイントロも書いています。

とにかく、聴いてて飽きさせたくない、というブラームスの意思が伝わってきます。

 

第二、第三楽章は控えめながら、古典的で優雅な旋律。ブラームスはロマン派なのですが、古典の模倣にこだわった人でした。当時、ドイツではワーグナー派とブラームス派にわかれ、討論が巻き起こったほどです。ワーグナーはオペラ専門の作曲家で、ジークフリートの出てくる「ニーベルングの指環」という総演奏時間12時間に及ぶ超大作を書いています。ワーグナーも特徴的な人でとにかく音に官能性を追求し、大きな音で鳴らすことを好み、どんどんオーケストラの人員を増加させました。オーケストラの巨大化はロマン派のテーゼでもあります。対して、ブラームスの書く曲はモーツァルトやベートーヴェンなどの古典派に影響を受けていて、優雅な旋律にロマン派らしい和声を用いて、新旧の良さを織り交ぜた、古典的な音をロマン派的に鳴らすことに終始した人でした。おそらく彼の頭の中には、「ベートーヴェンだったらどう鳴らすだろう」ということが念頭にあったのだと思います。交響曲第四番で教会旋法というバロック以前の旋律を用いたことで大きな議論を呼んだこともあります。

 

そして、最後の第四楽章。沈鬱な第一楽章から打って変わって第九的な祝祭に満ちたフィナーレを迎えます。また、第四楽章の主題はあまりにも有名で、音楽の教科書にも載っているほどですのでおそらく耳にしたことはあると思います。この旋律の覚えやすさ、キャッチーさ。これは今までのクラシックにはなかった特徴です。ブラームスは主題は歌える主題でなければならない、というこだわりを持っており、この主題こそがそれを体現しています。

 

ブラームスの残した4つの交響曲は四季に例えられることが多く、4つとも異なる性格を有していて、どれも聴きごたえがあります。また聴きやすいのも特徴の一つ。ブルックナーやマーラーは一時間越えは当たり前ですので、ブラームス・ベートーヴェンあたりから交響曲に浸ってみるとわかりやすいと思います。

 

以上、今日はブラームス交響曲第一番の紹介でした。次回はピアノ曲を取り上げます。