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ディスクレビュー-秋山黄色「From DROPOUT」

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久々にこんなに素直なロックを聴いた。最近はもうエイトビート自体が減ってきていたので、ここで一発カマシたるか!的な感じで完璧に従来型のエイトビートロックが鳴らされたこと、そしてそれがバンドではなくシンガーソングライターから出てきたことがまず一番の驚きだった。

ここで最近のベテラン勢のロックバンドの活動を振り返ってみてみると、BUMPは昔のような激しい曲はなくなってフォーキーやEDM系のトラックメイキング的な曲が増えた。RADもストリングスが増えた。ストレイテナーはちょっと迷走中でなぜかポップスをやっている。ACIDMANもストリングスが多くてほとんどギター弾いてないじゃない!みたいな曲が多い。アジカンはいつもどおり。でもリライトみたいな爆発的な曲はもう書けなくなったみたいだ。

日本ではいまだにギターロックがもてはやされているのだが、洋楽ではバンドやってるの?!だっさー!!みたいな感じだし、都市伝説ではあるがギターの音が入っているだけで曲が飛ばされるという噂がある。日本だってヒゲダンもKing Gnuも従来型のロックバンドとはいいがたい。

彼はなぜ、こうも完璧なエイトビートロックを、斬新に鳴らせるのだろうか?

秋山黄色の曲を初めて聞いた時、あ、この人は「米津チルドレン」だと思った。「米津チルドレン」とは勝手に僕が呼んでいる米津玄師のフォロワーであり、影響をもろに受けているアーティストである。僕の中のリストにはいまのところ、須田景凪と神山羊がリストアップされている。ここでの共通点はみんなもとボカロPであることだ。てっきり秋山黄色もそうなのではないかと思っていたが、そうではないらしい。しかし、サウンドはどこかネットカルチャーの影響がうかがえる。そして、影響を受けたアーティストが透けて見える。それこそ、前述したようなバンドからもろに影響を受けている、しかし、それを現代に継承すべくエイトビートを一度自分のフィルターに通して、特に彼はギターやボーカルに食う関係エフェクトをかけて独自の色に染めてしまう。だから、彼は「米津チルドレン」ではない。アルバムを通して聴くとわかるが、この人は本当にロックが好きで、たまらなくて、音楽をやっているのだ。あるいは、そこには今エイトビートロックがないことにフラストレーションを抱えているのかもしれない。しかし、彼の歌詞はとても素直だ。自分の生き方のみじめさ、醜さ、そういうものをさらけ出して、素っ裸になってリスナーに挑もうとしている。そしてそれが作為的に聞こえない。ごくごく自然に聞こえる。自然に音楽をやったらエイトビートになった。実に素直で、純粋。とにかく音楽が好きで好きでたまらないのだろう。

話題になっているYoutubeのTHE FIRST TAKEにも出演している。この番組では基本的に弾き語りが多いのだが、彼は一風変わったパフォーマンスを見せた。ボーカルに過度なエフェクトを施し、ギターも空間系エフェクトを使って幻想的なサウンドスケープを作りあげている。クリックに従わないところもエモーショナルでかっこいい。とにかく彼の魅力が一番に伝わる動画なのだ。

エイトビートを斬新な形で再定義する秋山黄色。昔、前述したようなバンドを聴いていたけれど、最近聞いてないなぁ、エイトビート、足りてないなぁ、という人におススメ。